2010/9/16 14:00
(2010年9月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
スペインの金融システムの約半分を占める未上場の貯蓄銀行(カハ)の今年上半期の利益が急速に落ち込んでいる。スペイン経済の低迷により、各行が多額の貸倒引当金計上や資産の減損処理に動いているためだ。
スペイン貯蓄銀行協会(CECA)が15日に公表したデータによると、金融危機を受け、持ち株会社18社に再編されつつある貯蓄銀行42行(小規模行を除く)とCECAの今年1~6月期の純利益の合計は前年同期比29%減の25億4000万ユーロ(33億ドル)に落ち込んだ。
今年1~6月の税引き前利益33%減
粗利益は同15%減の148億3000万ユーロにとどまったが、経費はほとんど削減されず、貸倒引当金の計上と資産の減損処理が50億ユーロ近くに達したため、税引き前利益は33%減の30億3000万ユーロとなった。
しかし、こうした悲観的な数値でさえ足元の現実に比べればまだ明るい。多額の不良債権を抱えて倒産の危機に陥り、スペイン中央銀行の管理下に置かれたカハ・カスティーリャ・ラ・マンチャとカハスールの2行は今回のデータから除外されているからだ。
さらに、CECAが公表した上半期の利益の約3分の1はバルセロナに拠点を置く貯蓄銀行最大手ラ・カイシャが計上している。
CECAのホセ・アントニオ・オラバリエタ会長は、今回の統計の対象となった貯蓄銀行はすべて6月30日時点で利益を上げており、7月のリスク資産に対する不良債権比率が5.3%とこの1年で小幅な上昇にとどまったことが奏功し、今年末にかけても引き続き黒字となるとの見通しを述べた。
だが、上場商業銀各行のアナリストや幹部は地域金融機関である貯蓄銀行の資産の質について懸念を抱いている。スペインの金融システムはサンタンデール、BBVA、ラ・カイシャなど堅調な銀行と、質の低い不動産に融資し、欧州中央銀行(ECB)からの公的資金に依存する小規模の貯蓄銀行とに二極化しつつあるという。
人件費の削減進まず
カバードボンド(金融債)の発行など、このところの企業向け市場での流動性回復の恩恵を受けているのは、資本基盤が比較的強固な金融機関に限られている。
ある商業銀関係者は「貯蓄銀行はスペイン中銀から統合に追い込まれたのに、何も対策を講じていない」と述べ、合併した貯蓄銀行が経費削減にほとんど手を付けていないことに不満を漏らす。CECAによると、貯蓄銀各行は支店閉鎖のペースを弱める一方で、今上期の人件費はほとんど削減されていないという。
By Victor Mallet
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