14/09 [FT]欧米銀、厳格な国内規制を警戒

2010/9/14 14:00
(2010年9月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

スイス・バーゼルにある国際決済銀行(BIS)=AP

 新たな銀行の自己資本規制案が合意された。新規制案の内容が予想より緩やかだったため株式市場では銀行の株価が上昇しているが、英米やスイスの主要銀行は国際規制を上回る内容の国内規制が施行される可能性に神経をとがらせている。


自己資本比率、7%に引き上げ


 バーゼル銀行監督委員会を構成する27カ国は12日、2019年までに狭義の中核的自己資本比率を現行の2%から実質7%に増やすよう義務付けることで合意した。中核的自己資本比率は、将来起こりうる損失に備えて銀行が蓄えておく優良金融資産の割合を示す数値だ。

 各国の規制当局や業界団体は、今回の合意は、始まったばかりの景気回復を損なうことなく金融危機の再発防止に向かって歩み出すための重要な一歩と評価している。

 市場も新規制案を好感し銀行株が買われた。自己資本比率の状況が特に良好と判断された仏ソシエテ・ジェネラルや米JPモルガンの株価は午前中だけでそれぞれ4.3%、3.7%上昇した。

 しかし今回の合意に批判的な専門家らは、ドイツや他の国々の合意を取り付けるため、自己資本の定義や実施の日程、資本比率全体が骨抜きになったと指摘する。また流動性の水準に関する新ルールの施行を2015年まで延期したことで金融システム危機にさらすとの声もある。

 リード・スミス法律事務所のジャッキ・ハットフィールド氏は「規制当局が金融セクターの圧力に屈した印象だ。合意された中核的資本比率では次の金融危機には対処できないだろう」と語る。


規制の運用、国によりぶれる恐れ


 新規制施行までの期間が長いことや、いくつかの国がより厳格な規制を望んでいたことを率直に認めたことで、国によって規制の運用がまちまちになったり、各国の規制のズレをついた銀行経営がなされたりすることに対する懸念も生じている。米英やスイスに拠点を置く大手銀行はより厳格な国内規制にさらされることへの不安を隠さない。

 スイスの規制当局が伝統的に適用する国際基準に上乗せした厳格な規制、いわゆる「スイス・フィニッシュ」や、英当局が幹部報酬に関する規制などに熱心なことが銀行の心配の種だ。また米当局が規制の実施を前倒しする可能性や、より厳格な規制を求める米議会の圧力に直面することなども懸念材料だ。

 これらは、すでに自己資本状況が良好な米欧銀行に対し株式の買い戻しや増配などを求めている投資家との摩擦の種になる可能性もある。

 アナリストはおおむね今回の合意を「良性」と判断している。しかし、ドイツの公立銀行は、新規制案は資本増強のスピードが速すぎて国内経済に悪影響を与える恐れがあると批判している。


by Brooke Masters, Jennifer Hughes & Nikki Tait


(c) The Financial Times Limited 2010. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

source: nikkei

.

No comments:

Post a Comment