住宅、中小企業、環境関連などの減税メニューが並ぶが、全体に小粒の内容にとどまった。日本経済へのてこ入れ効果は未知数である。
政府が2012年度税制改正大綱を決めた。社会保障と税の一体改革に伴う消費税の本格論議を前に、利害調整が難しい配偶者控除やたばこ税見直しなど大型案件は議論交錯を恐れ、先送りした。
その場しのぎの対応を続ける限り経済は活性化せず、深刻な税収不足からの脱却も望めまい。
政府・与党は、消費税率引き上げも含め、包括的な税制改革に早急に取り組む必要がある。
自動車業界と民主党が、「販売不振の一因は重い税負担にある」として取得税と重量税の廃止を強く求め、政府と民主党が深夜まで迷走を続けた末の妥結である。
環境に配慮した車を普及させる政策目標に沿ったエコカー減税の延長は理解できる。
だが、十分な代替財源が手当てできないのに、重量税の減税や補助金まで認めたのは甘すぎる。
民主党は最後まで、車の保有台数が多い地方や、自動車業界と関係労組に配慮したとみられる。
財政再建の重要性を顧みず、選挙を意識した大衆迎合主義がまたも幅をきかせた形だ。
こんな調子では、反対論の根強い消費税率引き上げを実現できるのか、大きな疑問符が付く。
政府・与党の場当たり的な姿勢は、11年度税制改正に盛り込みながら、野党の反対で成立していない項目の扱いにも表れている。
政府は12年度税制改正大綱で、高所得者を対象にした給与所得控除の縮小、石油石炭税の課税を強化する地球温暖化対策税の導入などを改めて提案した。
内容を変えぬまま再提案したところで、ねじれ国会では、再び否決されるだけではないか。
もともと11年度改正に盛り込まれた増税項目は、法人税の大幅減税で生じる財源不足を穴埋めすることを優先した結果、議論を尽くさず見切り発車したものが多い。仕切り直すのが筋だろう。
民主党政権は、比較的反発の少ない高所得層に税負担を集中させる傾向が強い。公平性を欠くだけでなく、労働意欲や経済活力を失わせる逆効果が懸念される。看過できない問題である。
(2011年12月11日01時10分 読売新聞)
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