竹中平蔵(たけなか・へいぞう) 73年日本開発銀行入行。大阪大助教授、慶大教授などを経て01年経済財政・IT担当相、02年経済財政・金融担当相。04年参院議員。経済財政・郵政民営化担当相、総務・郵政民営化担当相を経て慶大教授兼グローバルセキュリティ研究所所長。09年パソナグループ会長に就任。
民主党代表選の陰に隠れた形になったが、8月30日にようやく日銀が行動を起こした。日銀は金融政策決定会合を開き、期間3カ月の資金を政策金利で供給する「固定金利オペ(公開市場操作)」の供給額を10兆円増額(期間も延長)するなどの金融緩和措置を決定した。9月7日の決定会合では「適時適切に政策対応する」方針を示し、追加金融緩和に含みを持たせた。しかし一連の措置に対しては、極めて厳しい評価をせざるをえない。
関連記事 ・8月30日日経朝刊1面「日銀きょう臨時会合」
・8月31日日経朝刊5面「誤算の日銀、追い込まれ」
・9月1日日経朝刊3面「円高・株安 流れ再び」
・9月2日日経朝刊5面「新設オペ 効果限定的」
“誤算”を積み重ねた日銀の政策決定
日銀の政策決定に至る経緯が報告されているが、いくつかの“誤算”の積み重ねであったことがわかる。そもそも8月10日に定例会合が開かれ、政策の維持が決定された。しかし同じ日に、米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和に動いたという評価が広がったことで、円高が加速したのだ。
次に8月半ばに、菅直人首相と白川方明日銀総裁のトップ会談の予定が事前に漏れるという事態が生じた。結局これがうまくまとまらず、円高は一層加速。さらに民主党代表選のなかで、菅首相が経済対策作りを急ぎ、日銀にも歩調をあわせるよう期待を表明した。その結果、日銀は臨時会合を30日のタイミングで開催せざるを得なくなったのである。
しかしながら、及び腰の日銀をあざ笑うように、31日には円高・株安の流れが再び加速。政府・日銀の対応策の効果は、わずか1日しかもたないという悲惨な結果に終わった。
さらにその後、日銀は期間6カ月の資金を金融機関に供給する固定金利オペを初めて実施したが、市場にはさらなる金融緩和を待つ姿勢が強く、応札額は限定的だったという。
このような状況下で、関係者の間では政府と日銀に対する批判以上に、むしろ嘆きとあきらめの気分がまん延している。しかし今、世界の主要国が「日本型デフレ」に陥ることを懸念しているなかで、日本の対応に改めて注目が集まっているのだ。政府と日銀は態勢を立て直してデフレ克服に断固たる姿勢を示さねばならない。デフレがあるからこそ実質金利(名目金利マイナス物価上昇率)が高止まりし、結果的に円高が続いている。
デフレ克服への姿勢が見えない日銀
今回の対応ぶりから明らかなように、日銀の行動は政治的な批判をいかに回避するか、に偏っている。中央銀行として、どのようにデフレを解消したいと考えているのか、何ら展望は見えない。リスクをとってでも積極的にデフレを克服しよう、という姿勢自体が伝わってこない。今後、民主党代表選を経てどのような政権ができようとも、日銀の行動原理自体が変わらない限り、「日本型デフレ」の解消は期待できない。
source: nikkei
.
No comments:
Post a Comment