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- 2011/8/9 14:06
(2011年8月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
欧米財政不安の高まりで主要国の通貨や株が売り一色となる中、そのあおりを受けずに堅調な取引が続く通貨や市場もある。
■ノルウェーやスウェーデンに注目
スイスフランや金などの「安全資産」に資金が逃げ込むのは従来通りだが、今年に入り北欧の通貨や債券が比較的好調に推移しているのが目を引く。
ノルウェーの通貨クローネは今年、世界の主要通貨の中で相対的に強くなり、対ドルレートが6.1%上昇した。北海油田のオイルマネーで潤う同国の国債発行規模は小さいものの、ノルウェーの10年物国債価格は年初から1ポイント以上上昇し、利回りが2.67%となった。
欧米系格付け会社フィッチ・レーティングスによると、昨年、ノルウェーは国債格付けが「トリプルA」の国の中で経常黒字が最大となり、国内総生産(GDP)比10.5%に達している。
スウェーデンの通貨クローナも今年、隣国の水準には及ばなかったものの、対ドルで3.5%上昇。10年物国債価格は年初から1ポイント超の上昇で、利回りが2.23%となった。
BNYメロン・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ジャック・マルヴェイ氏は「欧州の資産を何か買うとしたら北欧の通貨、株式、債券を選ぶだろう。だが欧州不安の余波から完全に逃れられるわけではない」と指摘する。
実際、スウェーデン・クローナは8月に入り対ドルで3.2%下げており、ノルウェー・クローネも同2%下落した。
■好調なフロンティア市場
マネーの逃避先の候補に挙げられる他の通貨は、今月は概して低迷している。
例えば、中国の需要拡大を背景に強含んでいた資源国通貨は、オーストラリア・ドルが6%、ニュージーランド・ドルが5.5%下落した。
ただ、高値圏にある世界の通貨をくまなく調べると、より多様な分布図が浮かび上がる。好調な通貨の大半は混乱する先進国市場から遠く離れたフロンティア市場である。
南米パラグアイのグアラニは、今年最も価格の上がった通貨の一つ。対ドルレートで18.3%上昇した。これに続くのが、南太平洋のパプアニューギニアの通貨キナで、同17.4%の上昇。アフリカ南部のモザンビークでは通貨メティカルが同16%上昇した。
ここ1カ月では他のフロンティア通貨がさらに堅調に推移した。モンゴルのトゥグリクは対ドルで1.5%上昇、南米ガイアナのガイアナ・ドルも同1%上昇した。
■世界のどこかに上げ相場は存在
こうした通貨の多くは流動性が極めて低く、売却益を狙う資産としては不適格で、入手方法も限られる。しかしアナリストは、フロンティア通貨が市場の混乱に比較的強いことから、大胆な投資家が世界経済の辺境地帯で利益を稼ぎ出すのも一手だと話している。
マルヴェイ氏は「現在の低金利環境下では新たな投資機会が求められており、普通は手を出さない珍しいフロンティア資産が、興味深い利回りを生むこともある」と語る。「常に世界のどこかに上げ相場は存在する。だからこそ我々は分散投資を説いているのだ」
By Robin Wigglesworth
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