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- 2011/9/13 7:02
竹中平蔵(たけなか・へいぞう) 73年日本開発銀行入行。大阪大助教授、慶大教授などを経て01年経済財政・IT担当相、02年経済財政・金融担当相。04年参院議員。経済財政・郵政民営化担当相、総務・郵政民営化担当相を経て慶大教授兼グローバルセキュリティ研究所所長。09年パソナグループ会長に就任。
2008年9月15日、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが米連邦破産法の適用を申請。その結果、世界の経済に大きな波紋が広がった。いわゆる「リーマン・ショック」である。リーマン・ショックから3年、世界経済に何が残り、何が改まったのか……。最近のニュースの中から読み解くことができる。
・9月6日日経朝刊7面「韓国、不動産神話崩れる」 |
・9月6日日経朝刊7面「米、追加緩和観測強まる」 |
・9月8日日経朝刊3面「ユーロ危機、支援に制約」 |
・9月9日日経朝刊7面「ユーロ防衛、苦難続く」 |
・9月10日日経朝刊7面「ブラウン前英首相寄稿 欧州銀、資本増強は不可避」 |
サブプライムローン(信用力の低い人向けの住宅ローン)などリスク金融商品への過大な投資によって、米国の金融機関が大きな打撃を受けたことは記憶に新しい。その背景にあったのは、米国の不動産バブルであり、これを生み出した過剰な流動性問題だった。この3年間の世界経済の動きは、(1)積み重なった大量の流動性は引き続き世界を駆け巡っていること、(2)一度バブルの崩壊を経験した経済は立ち直りに相当の時間を要すること、を我々に示すものだった。
月(国際) | 飯野克彦 |
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火 | 竹中平蔵 慶大教授 |
水(企業) | 西條都夫 |
木(政治) | 秋田浩之 |
金(企業) | 田中陽 |
米国では、バブル崩壊後のバランス・シート調整を粛々と進めている。その方向は間違っていないが、調整にはまだ時間がかかるという状況だ。8月の雇用統計が米経済の減速を裏付けたのを受けて、米連邦準備理事会(FRB)は更なる追加策に動くとの観測が市場関係者の間で強まっている。エコノミストの多くは、FRBが20~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加策を決めると予想する。「出口」はまだ遠いと言える。
■過剰流動性が国債投資に向かった欧州
過剰な流動性の問題は、欧州にもあった。ただ欧州では、サブプライムローンのようなリスク資産に投資する代りに、国債への投資が進んだ。これが、統一通貨ユーロという問題とも絡んで、ソブリンリスク(政府債務の信認危機)問題を引き起こした。
さらに、国債市場の混乱に銀行部門の不安が加わり、金融市場の緊張感が増している。例えば8月上旬から欧州中央銀行は、域内3、4位の規模を持つイタリアとスペイン国債買い入れを事実上始めた。8日、ギリシャの10年物国債金利は再び20%を超え、イタリアも5%超だ。国債市場の不安は、国債を抱えるユーロ圏の金融機関への不安を生んでいる。イタリアの民間銀行は欧州中央銀行から8月に850億ユーロ(2カ月前の2倍以上)を借り入れたという。こうした不安は実体経済にも広がり、4~6月期のユーロ圏成長率は前期比0.2%へと鈍化したのである。
リーマン・ショックと今日のユーロ危機の共通点は、激しい市場の動きに対応できるような政策・制度の枠組みが十分に整備されていないことだ。例えば米国では、銀行ではないシャドー・バンク(投資銀行など)への監督の枠組みが十分でなかったために、リーマン破綻を防げなかった。また最近のユーロ危機に関し、ドイツ連邦憲法裁判所は7日、ユーロに参加する他国への金融支援について「今後は一件ごとに連邦議会(下院)の委員会の承認を得る必要がある」との見解を示した。今後、債務危機に陥った国への機動的な支援に、大きな制約が生じる可能性がある。
もちろん、この3年間の変化も大きい。シャドー・バンクを含め、社会全体の信用不安を起こすほど大規模の金融機関には、共通の監視基準を設ける仕組みが検討されている。また、世界的な流動性の向かう先が、大きく変化した点も注目される。米国から欧州、そして成長力のあるアジアの国、新興国に向かっていると考えられる。
■韓国で「不動産神話」が崩壊、アジアの成長に陰りも
しかしそのうちの一つ、韓国でも既に異変の兆しがある。韓国で値上がりが確信されてきた「不動産神話」が崩れ、今回の米国経済の減速以降に起きた不動産取引の落ち込みが長期化しているという。ウォン安を武器に輸出主導で成長してきた韓国経済に、国内の不動産不況が重くのしかかる構図となっている。
バブル崩壊の瞬間から、次のバブルが始まる……。世界的な規模の流動性の存在によって、一つのバブルは次のバブルの始まりのように映る。これを防ぎ、経済を回復させる手段は容易には見いだせない。この点についてゴードン・ブラウン前英国首相は、どの中央銀行も打てる手の限界に達したように見えるがそれは現状の方式での限界であり、決して敗北主義に陥ってはならない、と警告する。ブラウン氏の言うとおり、主要20カ国・地域(G20)首脳会議の更なる結束と協調が、従来以上に必要となっている。
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