- 2011/9/13付
英国のオズボーン財務相が設置した銀行業に関する独立委員会は12日、金融規制見直しの最終報告を発表した。預金や中小企業貸し出しの商業銀行を証券業務など投資銀行から分離して経営し、市場が再び混乱しても損失を預金部門に及ぼさない。英政府は最終報告を原則受け入れる方針だが、景気への影響に配慮し、実施は2015年以降まで見合わせる見通しだ。
欧州は銀行・証券兼営を認めるユニバーサルバンキング(総合金融業)の伝統を守ってきたが、英国で修正が進むことになる。米国では約80年ぶりの抜本見直しとなる金融規制改革法(ドッド・フランク法)が昨年7月に成立、銀行の高リスク取引を制限する。
英独立委の最終報告では、商業銀行部門は金融グループ内の別個の銀行組織として分離・独立し、認可される業務は預金や中小企業融資などに限られる。13年に始まる新しい銀行資本規制(バーゼル3)を3%上回る10%の普通株自己資本を備える。バークレイズやHSBCはじめ英銀は追加資本調達を迫られる可能性があり、預金を失う投資銀行部門の資金調達も課題になる。
英国の銀行見直し論議の出発点は、08年の金融危機後に多額の税金で大手行を救済した反省だ。昨年の総選挙で第3党の自由民主党が銀行形態の見直しを訴え、保守党との政権合意に盛り込んだ。オズボーン財務相は独立委の提案を支持する立場を表明している。
独立委はバーゼル3の導入完了期限である19年までに英銀見直しも行うべきだとした。英政府は近く、独立委の報告を実現する立法措置に入るとみられる。ただ、経営形態の見直しが銀行財務の負担となり、企業融資が縮小し経済の足を引っ張る懸念もある。このため、銀行形態を変更する時期そのものは10年代後半とする方向で、15年までに実施される次の総選挙後になる見通し。
足元の金融市場では南欧諸国の債務危機が欧州銀不安に波及し、緊張が高まっている。
(ロンドン=上杉素直)
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