10/11 (英FT社説)オリンパス損失隠し 企業統治、他山の石


2011/11/10付
 オリンパスの高山修一社長が、10億ドル超にのぼる不可解な企業買収や手数料の支払いを「適正だ」と株主や世界のメディアに言明したのはわずか11日前のことである。それが8日には一転、20年前の証券投資の損失を穴埋めするための出費であったことを認めた。
 41年間オリンパスに勤めてきた高山氏は、その先の疑問には答えなかった。損失を出した証券投資とはどんなものか。誰が承認したのか。公表まで時間がかかったのはなぜか。買収後ただちに評価損を出す企業を買うことが、なぜ損失隠しの手法となるのか。もしオリンパス製カメラで撮った写真が、高山氏の説明と同じくらい不明瞭だったら、同社ははるか昔に廃業していただろう。
 だが逆に、オリンパスの過去の買収の経緯がはっきりしないからこそ、同社が抱える問題を浮き彫りにする効果もある。例えば「質問をしなければ、裏切られることもない」という社風。これを支えるのは身内を優遇する年功序列の昇進制度だ。しかし、副作用として共謀体質があるのではないか。前経営陣の不祥事は個人的な利益のためではないとされているのに元幹部らはどうしてそこまで沈黙を守ろうとするのか。なぜ高山社長や他の役員はマイケル・ウッドフォード元最高経営責任者(CEO)が疑問を呈した時にもっと深く追及しなかったのか。
 残念ながら日本の当局は企業統治を向上させる対策に積極的に取り組んでこなかった。経営の監視強化に向け、上場企業に社外取締役の設置を義務付けないのはその一例。社外取締役が必ずしも万能なわけではないが、リスクを減らすことができるのは明白だろう。
 今回の件は日本以外の規制当局や企業にとっても多くの教訓となった。資産バブルのつけという亡霊を鎮めるのがいかに大変かを如実に示したのだ。バブル崩壊後、日本の企業経営者は降りかかった損失を何とか隠せないかと必死の思いにかられた。しかし一度出した損失は永遠に消えてなくなることはない。一時的に体面が傷ついたとしても、後になって身も心もボロボロになるよりずっとよい。
(9日付 社説)
英フィナンシャル・タイムズ特約

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