23/09 FRBにも万能薬はない



2011/9/23付
 米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和策の強化に動いた。保有資産の中身を入れ替え、長期国債の購入を増やす。今のFRBに景気浮揚の万能薬はない。効果に限界があるのは承知のうえで、可能な政策手段を繰り出すしかないだろう。
 21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場が予想していた「ツイスト・オペ」の実施を決めた。期間6~30年の長期国債4000億ドル(約31兆円)を来年6月末までに購入し、その代わりに3年以下の国債を同額売却するという。
 資産規模を変えずに長期国債の購入を増やすことで、長期金利の低下を促す狙いがある。量的緩和の第3弾(QE3)は資産の拡大を通じて大量の資金を供給するため、物価上昇圧力が高まりやすい。その弊害を避けるべきだと判断した。
 米経済の減速懸念は確かに強い。住宅市場や家計債務の調整が長引き、雇用の改善も遅れているのは心配だ。欧州の信用不安が収まらず、世界経済危機に発展する可能性も否定できない。FRBが景気の下支えに全力を挙げるのは当然である。
 しかし目覚ましい成果は期待できそうにない。過去最低の水準を記録した米長期金利の低下余地は乏しい。FRBは少なくとも2013年半ばまで、事実上のゼロ金利政策を続ける方針も確認した。持てる政策手段をうまく組み合わせ、緩和効果を少しでも高める必要がある。
 米政府もFRB頼みの限界を認識しているはずだ。オバマ大統領が4470億ドルの景気・雇用対策を打ち出したのは妥当である。財政・金融両面の対応が今の米国には欠かせない。中長期的な財政健全化に責任を持ちながら、短期的には対策の実行を急がなければならない。
 米経済の悪化が鮮明になるようなら、もちろん追加緩和も必要になる。今回のFOMC声明も「深刻な下振れリスクがある」と指摘し、今後の対応に含みを残した。新興国などの反発は避けられないが、QE3の準備を怠るべきではない。
 日本を含む主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が22日、ワシントンで開かれる。欧州不安だけでなく米経済の情勢についても、広く認識を共有してほしい。

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