[FT]選挙後のギリシャ、ロシアや中国に接近か



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2012/6/15 7:00
(2012年6月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 日曜日のギリシャの選挙にかかっているのは、ユーロ参加国としての同国の立場と、選挙結果が好ましくなかった場合に欧州の政策立案者が域内を市場の感染から守る能力だ。ユーロ圏の財務相たちが先週末に先手を打ち、最大1000億ユーロの救済資金でスペインの銀行を支えることにしたのは、このためだ。
■有力政党がロシアと中国に関心
SYRIZAのツィプラス党首はベネズエラのチャベス大統領を信奉している(6月8日、アテネの造船所を訪れた同党首=中央)=ロイター
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SYRIZAのツィプラス党首はベネズエラのチャベス大統領を信奉している(6月8日、アテネの造船所を訪れた同党首=中央)=ロイター
 別の次元でこの選挙にかかっているのは、金融ではなく地政学の問題だ。深刻化するギリシャの危機は、同国が欧州・大西洋社会の熱心なメンバーにとどまろうとする願望と能力に疑問符をつける形で、国内の政治勢力を再編しつつある。
 選挙で勝つ可能性が高いのは、保守派の新民主主義党(ND)か、共産主義を起源とする新興勢力の急進左派連合(SYRIZA)だ。思想上の背景は異なるものの、どちらもロシアと、ロシアほどではないが中国との関係強化に関心があり、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)内のパートナー諸国の懸念を招いている。
 自国の居場所は西側陣営にあると信じているギリシャの政治家も心配する。「想像してほしい。ギリシャが抱えるすべての経済問題に加えて、我々が米国を含むパートナー諸国を無視してロシアや中国と付き合い始めたらどうなるか」。元与党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)に近い消息筋はこう語る。
■欧州外の支援を探る両党
 これがあり得るのは、ギリシャの絶望的な経済状況のためだ。経済難のせいで、新政権は主な債権者であるEUと国際通貨基金(IMF)以外に支援を求める気になりかねない。総じて親欧州の立場を取るギリシャ外務省の混乱もマイナス要因だ。だが、ギリシャの外交政策の伝統には、もっと根深いナショナリズムと左派急進主義の衝動が潜んでおり、それが再び表面化する恐れもある。
 SYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首は2009年にベネズエラを訪問しており、ウゴ・チャベス大統領の信奉者だ。同大統領の反米主義の世界観はギリシャ左派が代々抱く帝国主義への憎しみと重なる。チャベス大統領はベネズエラの埋蔵石油を外交手段として使うことにたけている。エネルギーを輸入に大きく依存するギリシャでツィプラス党首が権力を握れば、この要因は脚光を浴びるかもしれない。
 一方のNDのアントニス・サマラス党首は1月にモスクワを訪問し、いずれもキリスト教の正教派であるロシアとギリシャの文化的な絆を強調した。ロシアはギリシャのガス輸入の大半を供給しており、ロシア政府はキプロスに25億ユーロの低利融資を手配している。キプロスを率いるギリシャ系キプロス人の指導者は、ともにトルコを警戒するギリシャ政府と親密だ。
NDのサマラス党首は1月にモスクワを訪問した(6月11日、アテネで支援者と握手する同党首=右)=ロイター
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NDのサマラス党首は1月にモスクワを訪問した(6月11日、アテネで支援者と握手する同党首=右)=ロイター
■欧米に反発する心理も
 親欧米派のギリシャの政治家にとって問題は、経済危機のおかげで、EUやNATOの忠実な加盟国であることは、金融支援と引き換えに厳しい条件を課す欧州とIMFの監督官への屈服だと、ギリシャ国民がある程度思っていることだ。
 比較的若いギリシャ人は近代の欧州国家としてのアイデンティティーを誇りにするが、若者の半分は現在失業し、将来に不安を抱いている。一方、年配のギリシャ人は、1974年にトルコがキプロスに侵攻した時にNATOが傍観姿勢を取ったことや、1967~74年のギリシャ軍事政権に対する米国の「支援」を覚えている。
 このため、ギリシャを親欧米路線にとどめておく根拠は、債務危機が勃発する前の3年前と比べて正当化しづらくなっている。最終的な論拠は、ギリシャはユーロ圏外よりも圏内にいた方が安全という点だ。だが、欧州の一部の政策立案者は、ユーロ圏の安定にはギリシャの追放が必要かもしれないと示唆する。
 名高いEU問題専門家のパナギオティス・イオアキミディス氏は、ギリシャがユーロ圏に迎え入れられる2年前の1999年にこの問題の核心を突き、ギリシャ外務省向けの政策文書の中でこう書いた。「単一通貨圏の正式メンバーであることは、ギリシャの対外安全保障が著しく強化されることを意味する」
 日曜の選挙の結果がどうなろうとも、欧州につながる綱を切られたギリシャでは、国家不安の意識は高まる一方だろう。
By Tony Barber
(翻訳協力 JBpress)
(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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