[FT]機関投資家、米政府の穀物保険助成で恩恵



2012/6/15 14:00
(2012年6月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 米政府の農業助成金拡大で思わぬ恩恵を受けるのは機関投資家のようだ。
■米国の農地が魅力的な投資対象に
 連邦穀物保険は米上院で今週審議が進んでいる農業関連法案の目玉で、米議会予算局(CBO)によれば、同保険に対し今後10年間で900億ドル超の税金が投入されるという。
 この保険で不作や価格下落から農家を守ることができると法案提出者は主張する。農地投資の安全な場所として米国の魅力も高まると投資家もみる。NCREIF(全米不動産投資受託者協議会)農地インデックスもこの1年で17%上昇した。
 「実のところ穀物保険をかけてさえいれば、投資先の農家は破産を免れる。政府が保証してくれる保険取引なんだ」。運用資産475億ドルの米不動産ファンドAEWキャピタル・マネジメントの農地投資部門トップ、ハント・ストゥーキー氏はこう話す。「(農家が破産するような)悪い年はないだろう」。
 投資家の間で米農地の人気が高いのは、数十年前に設立された穀物保険だけが理由ではない。米国の財産権の慣習や資金借り入れコストの低さ、優れた農業技術、他国にはない穀物輸出インフラもそうだ。投資家は世界の食糧需要増大に賭けたり、インフレーションをヘッジしたりするために肥沃な土地を探し求めている。
■大手ファンドも農地投資に参入
 農地投資というニッチ市場には、全米教職員年金・保険基金(TIAA-CREF)、UBS、ハンコック・アグリカルチャラル投資グループに加え、AEWやGMOなどの大手ファンドも参入している。機関投資家が所有する米農地の割合はまだ1~2%にすぎず、機関投資家の農地購入を禁止している州もある。
 穀物保険は「考慮する数多くの要素の一つにすぎない」と4870億ドルを運用するTIAA-CREFのトップ、ホセ・ミナヤ氏は言う。とはいえ農地投資業界では穀物保険の重要性は認められている。「損益計算書の90%に保険をかけられる事業は農地以外では知らない」。ある大手農地投資ファンド・アドバイザーも語る。
 農業コンサルティング会社ハイクエスト・パートナーズのフィリップ・デラペルース社長は米農地と米銀行を比べる。「最後の保証人がいるのだ」と指摘する。
 米政府は穀物保険制度に基づき、農家の保険料約60%を助成し、不作や価格下落による損失を対象とした保険契約を引き受ける企業に再保険をかける。米政府は昨年、保険料74億ドル、民間保険会社の費用13億ドルを負担した。
 超党派による修正案では、所得の高い農家への保険料助成を削減する一方、農地1カ所当たりの助成額を最大4万ドルに制限する。現在は保険料助成に上限はない。
By Gregory Meyer
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