[FT]またもやイタリアに危機悪化の波(社説)



2012/6/14 7:00
(2012年6月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 なんてことだ。また始まった。比較的平穏だった数カ月間を経て、ユーロ圏の危機が再びイタリアの玄関に打ち寄せている。10年物国債の利回りは6%の節目を上回る水準で高止まりし、ミラノの証券取引所は最安値を探っている。
■混乱を前に無為に見える政府
イタリアのモンティ首相の支持率はかつてほど高くない(6月12日、ローマで記者会見に臨んだ同首相)=AP
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イタリアのモンティ首相の支持率はかつてほど高くない(6月12日、ローマで記者会見に臨んだ同首相)=AP
 ローマがまたしても嵐の真っただ中にあるとすれば、部分的にはイタリアの手が及ばない理由からだ。スペインの銀行部門を救済する計画は、今のところ投資家を納得させていない。銀行を破滅させるような不動産バブルを回避したイタリアはスペインと運命をともにするわけではないが、市場の心理では前々から次の標的になる定めにあった。
 これらのただし書きにもかかわらず、最新の混乱の波は政府が弱気になった時を見計らったようにローマを襲った。経済は縮小しており、景況感は弱い。政府に対する国民の支持は下り坂で、マリオ・モンティ首相の支持率は今、昨年秋のピークを大きく下回っている。
 これはある程度は緊縮策が招いた結果だ。だが、政府も一定の責めを負わねばならない。各省庁の過度な警戒のせいで、政権発足から最初の100日間にあった改革主義の精神が尽きてしまった。行き過ぎた警戒は今、完全な無気力へ転じる恐れがある。政府があまりに無為に見えるため、政界の一部からは早期の選挙を求める声が上がり始めている。
■改革の意志を改めて表明せよ
 選挙の実施は漂流の期間が長引くよりは明らかにましだ。だが、もっと望ましい結末は現政権が改革の熱を取り戻すことだろう。改革すべき項目のリストは短くはない。政府が着手した歳出の見直しで、企業と労働者の税金を引き下げる財源を捻出できるかもしれない。行政府が議会を通そうとしている汚職防止法と併せて、遅々として進まず投資の障害となる司法制度を改革してもいい。
 だが、これを実現するには政府を支える各政党がもたもたするのをやめねばならない。既成政党の崩壊に気を取られ、一部の閣僚がより大きな政治的野心を抱くのは理解できるが、そうした人は差し当たり野心を棚上げするか、政府を去って野心を追求すべきだ。
 昨年秋に国債利回りが上昇した時、イタリアは市場の圧力を政治改革の刺激剤に変えることができた。投資家が新たな疑念を表明している今、イタリア政府は改革実行の意志を再表明すべきだ。
(翻訳協力 JBpress)
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