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- 2011/11/11 15:42
金融庁の企業会計審議会は10日、国際会計基準(IFRS)の導入について議論した。金融庁は前回までに提示した日本の会計基準・開示制度全体や非上場企業・中小企業への影響など11の検討項目のうち、今回は日米欧の開示制度、連結・単体財務諸表の関係などについて検討を進めた。またフランス、ドイツなど欧州、米国・カナダ、中国・韓国について11月下旬から順次、海外調査を行う方針も示した。主な発言要旨は以下の通り。
▽自見庄三郎金融相
「オリンパスが過去の損失計上先送りについて公表しているが、公平・透明な市場という観点から極めて遺憾だ。各上場企業で企業統治を十分発揮して適切な情報を開示することが欠かせない。今回は連結と単体の財務諸表のあり方について議論していただきたいが、単体財務諸表の会計基準は会社法、税法との関係が深いため十分に配慮する必要がある」▽八田進二氏(青山学院大学大学院教授)
「IFRSの導入方法を検討することが第一だ。必ずしも全面的な受け入れにこだわる必要はない。IFRSを適用する企業も限定的で良いのではないか。日本の会計基準がEUから国際会計基準と同等と評価されたことに安住しているのは危険だ。適用を企業に任せる『任意適用』で様子を見ながらというのでは通らない。(すべての企業に対する)全面適用を強行すると、会計情報に品質不良を起こし、結果として投資家の期待を裏切りかねない」
▽伊地知隆彦氏(トヨタ自動車取締役・専務役員)
「ここで連結先行という考えをキャンセルして完全な連単分離を明確に打ち出すことが大事。(トヨタは連結決算は)米国基準、(単体は)日本基準でやっているが、そのことで大きな問題が生じたり、コストが掛かるということは起きていない。むしろIFRSが単体に適用された場合、税務申告上の調整や税金そのものの問題が気になる」
▽逢見直人氏(連合特別専門委員)
「単体の日本基準をIFRSに合わせることには抵抗がある。単体は単体として(日本基準で)開示するべきだ。人件費比率、労働分配率などは単体でこそ分かる。重要な情報源になっている」
▽斎藤静樹氏(明治学院大学教授)
「連結と単体の(会計基準が)違うのは例外だ。いずれ単体(の会計基準)が連結に引っ張られて、連単分離は成立しなくなる可能性が高い。連結の会計基準が任意適用となっていて、適用する企業の数が少ない場合、連単分離は比較的容易だ。例えば任意でIFRSを使う会社が、自分のコストで単体は日本基準で開示するのは可能だろう。IFRSを丸のみするのなら連単合わせてするべきだ。(IFRSと日本基準を)共通化する場合でも連単一致で行うべきだ」
▽引頭麻実氏(大和総研執行役員)
「実際に米国会計基準を採用している企業は(日本で)40社弱ある。単体は日本基準になっているが、連単で(損益、資産・負債などの)数字があまりにも違う場合には、企業の投資家向け広報(IR)担当者が的確に答えるケースが増えている。ただ、強制適用となった場合、すべての企業で(情報開示に対する)理解が進むかどうかは分からない」
▽関根愛子氏(公認会計士)
「連単分離は難しい。連結は単体が元になっており、連単で(会計基準が)違うと実務的にも二重になる。日本の開示制度全体として見ても、会社法では分配可能額の計算など利害調整機能と(投資家などへの)情報提供機能の観点から、すべての企業に単体財務諸表の作成を求めている」
▽斉藤惇氏(東京証券取引所グループ社長)
「当期純利益は投資家の立場では必要な数値だ。米国会計で使ってきた数値でもある。IFRSの中にも、保有する資産・負債の変動による、一種の当期純利益(その他包括利益=OCI)が出てきた。ただ、(四半期、年度など)一定期間の事業で得られた利益と、保有していた資産の価格変動によってできた損益が明確に分かれて得られるのが(投資家にとっては)一番良い」
▽広瀬博氏(住友化学副会長)
「製造業の競争力の源泉は技術革新と現場の創意工夫だ。ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)に基づき、設備投資、研究開発費、人材育成投資などを抱えて長期的な視点から事業経営しているのが特色だ。日本の会計制度は、こうした競争力を積極的にサポートし、今後も情報インフラとして発展させていくべきだ」
▽佐藤行弘(三菱電機常任顧問)
「製造業では売上高、営業利益、当期純利益はきわめて重要な指標で経営や従業員の活動目標になる。投資家、アナリストも一義的には損益を重視しているはずだ。IFRSは当期純利益の定義が不明確で、営業利益というコンセプトがない。退職給付や減価償却などについて、コスト形成に支障を来すような思想がある。金融商品の会計処理についても『思想なきルール作り』という印象が強い」
(沢田和人、清水崇史)
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