ギリシャに端を発した欧州発金融危機を食い止めようと、欧州各国の首脳が薄氷の合意にこぎつけた。だが、金融不安払拭には力不足だろう。
ユーロ導入の独仏など17か国を含む欧州連合(EU)首脳会議は、厳しい財政規律を課する新条約を締結することで合意した。
危機をもたらしたギリシャなどの放漫財政を教訓に、財政健全化を各国に義務づける方策は、ひとまず前進と評価できよう。
通貨は一つだが、財政政策は各国でバラバラだったことが、ユーロの根本的な弱点だった。
メルケル独首相とサルコジ仏大統領が主導して、予定通りに2012年3月までに各国が新条約に署名すれば、懸案の財政統合に向け、欧州統合は新局面に入る。
だが、新条約案に対し、非ユーロ圏の英国のキャメロン首相だけは、自国の財政主権を守る立場から参加を拒否した。独仏と英国の対立は、EU内の不協和音をさらけ出したと言える。
さらに深刻なのは、今回の首脳会議が、燃えさかる当面の危機を封じ込めるために必要な大胆な策を打ち出せなかったことだ。
会議は、財政危機国に資金支援する欧州版の国際通貨基金(IMF)とされる「欧州安定メカニズム(ESM)」について、予定を1年前倒しして来年半ばに発足させる方針で一致した。
IMFを通じて、財政危機国に最大2000億ユーロ(約21兆円)を貸し出す救済策も決めた。
だが、IMF活用案には、IMF最大出資国である米国が新たな資金拠出に難色を示すなど、実効性に疑問も残る。
ユーロ圏が共同で発行する「ユーロ共通債」も、ドイツの反対で合意できなかった。
何より、ESMの母体となる欧州金融安定基金(EFSF)の拡充が進んでおらず、危機対策の資金が十分確保できていない。欧州がEFSF強化に迅速に動くことが信頼回復に不可欠である。
世界の株式・為替市場や、格付け会社が、首脳会議の結論をどう評価するのかは不透明だ。市場では、欧州中央銀行(ECB)がイタリアなどの国債を大量に買い支えることへの期待があるが、ECBは慎重姿勢を崩していない。
危機克服への綱渡りを先導する独仏両国の責任は大きい。
(2011年12月11日01時10分 読売新聞)
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