【ドバイ=太田順尚】米軍のイラクでの戦闘任務が31日、正式に終了した。約5万人の駐留米軍は2011年末の完全撤退を視野にイラク治安部隊の訓練、支援に特化することになり、イラク戦争は03年3月の開戦から7年5カ月を経て大きな節目を迎えた。マリキ首相は同日、「イラクは今日、主権と独立を得た」と述べ、今後の治安維持に自信をにじませた。ただ、宗派間の対立や過激派によるテロが続く中、新政権樹立は難航しており政情安定には課題が山積している。
31日、イラクを訪問したバイデン米副大統領(左)とイラクのマリキ首相(バグダッド)=ロイター
マリキ首相は「イラク治安部隊は米軍の任務終了後も治安を維持できる能力がある」とも強調。31日の式典出席のためバグダッド入りしたバイデン米副大統領も、イラクの治安について「まったく問題なくなるだろう」との見通しを示した。
すでに米戦闘部隊は19日に撤収を完了。オバマ大統領は31日にテキサス州の米陸軍基地を訪問し、イラクから帰還した米軍兵士を慰労する。
ただ、米軍が駐留した7年5カ月は、度重なる暴力とイスラム教シーア派とスンニ派による根深い対立が暗い影を落とした日々だった。北部のクルド人を含めた民族間の争いも激しさを増した。
さらに開戦後には国際テロ組織アルカイダ系のテロリストらが流入し、治安が極度に悪化。06、07年には毎月2千人を超える市民が犠牲となり、内戦状態と形容されるほどの事態に陥った。開戦以来の民間人の死者は10万人に上り、4400人の米兵が犠牲となった。
バイデン副大統領は31日、マリキ首相らと相次ぎ会談し、新政権樹立に向け難航する連立協議の進展を促した。7月に続く副大統領のイラク訪問は、米国が抱く米戦闘部隊なきイラクへの懸念の大きさを物語る。
米軍の今後の任務は軍22万人、警察44万人からなるイラク治安部隊への助言や訓練などに移行。治安が急激に悪化した場合のみ、イラク治安部隊の戦闘を補佐するとしている。だが、米戦闘部隊撤退を見透かすように軍施設や警察署を狙ったテロが相次ぎ多くの市民が巻き込まれた。マリキ首相は治安部隊に厳戒態勢を指示したが、治安部隊の能力そのものへの懸念から、オバマ政権は戦闘任務の終了を急ぎすぎたとの声も出ている。
治安活動を指揮すべき政治も、3月の連邦議会選後の連立協議が難航し、次期政権の枠組みがまだ見えていない。泥沼の宗派間抗争が続けば、06、07年の状況に逆戻りする懸念もある。イラク国民は、米国の戦闘任務の終了を、自立への期待と不安が入り交じる気持ちで迎えている。
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