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- 2012/6/12 14:00
(2012年6月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
スペインの大手銀行が安堵のため息をついている。国際通貨基金(IMF)がスペイン大手銀の健全性を証明する報告書を公表し、ユーロ圏諸国が同国銀に対し1000億ユーロの支援を決定したのを受け、投資家が各行の資本力の強弱を見極められるようになると期待を寄せている。
■371億ユーロの資金注入が必要
IMF報告によると、スペインの2012年の経済成長率が前年比マイナス4.1%に落ち込み、住宅価格が20%近く下落するという厳しい想定では、同国の金融システム全体で371億ユーロの資金注入が必要となる。増資が不要なのは、IMFの銀行区分で「G1」に入るサンタンデールとBBVAの大手2行だけだという。
IMF報告のおかげで、大手2行は今回の資金支援による最大の勝者になるとの見方がある一方、IMFから十分な資本があると判定された大手行でさえ、脆弱なスペイン経済の影響は免れないとの指摘もある。
IMFでは「G3」に区分され、スペイン政府の公的資金注入を受けている中小貯蓄銀行(カハ)には、最大の210億ユーロ超の資金注入が必要とみられている。5月に同国政府に190億ユーロの公的資金注入を要請し、一部国有化された大手銀バンキアもG3に含まれることを考えれば、この予測は驚きではない。
IMFや銀行アナリストらによれば、バンキアのほかに差し迫って公的資金注入が必要なのは、ノバカイサガリシアとカタルーニャ・カイサだという。
IMFが指摘したスペイン銀の資本不足額は、ユーロ圏諸国が予定する支援額のわずか3分の1にすぎない。だがアナリストらは、IMF報告に基づいて各行に資金が分配される可能性を予測している。
IMFの想定によると、「G4」に区分される小規模の民間銀行は70億ユーロの資本不足に陥る。資本注入の対象としてバンコ・ポピュラールやバンコ・サバデルが挙がっているが、自力での増資が可能だとの声もある。
■支援が十分か確信持てない投資家
スペインの規制当局や閣僚らは、国内金融機関の苦境や金融システムの信頼回復に必要な増資額をことごとく過小評価してきた。
今月辞任したスペイン中銀のオルドネス前総裁は9カ月近く前に銀行3行を国有化し50億ユーロの公的資金を注入後、「資本増強プロセスは完了した」と宣言した。だがこれは全くの誤りだった。
ユーロ圏諸国の支援決定に対する市場の反応は、投資家が1000億ユーロの支援額が十分かどうか確信しきれていないことを示している。スペイン市場では大半の銀行株が一時反発したものの、終値は前日とほぼ同水準だった。
市場に先行き不透明感が残るのは、IMFがリポートで指摘した資本不足額370億ユーロとユーロ圏からの最大1000億ユーロの支援額との間に開きがあるからだ。ローランド・バーガー・ストラテジー・コンサルタンツとオリバー・ワイマンの独立機関2社による詳細な銀行審査の結果が出れば、不透明感はいくらか払拭されるだろう。
小規模行は増資により株式価値が希薄化する恐れがあるため、株価下落も予想されている。だが、IMF報告でのお墨付きと欧州金融安定基金(EFSF)や7月に発足する欧州安定メカニズム(ESM)からの資金支援があっても、サンタンデールやBBVAでさえ全幅の信頼を得られるわけではない。
野村インターナショナルのダラ・クイン氏は「大手銀でさえ国内子会社の資本増強を要請される可能性がある」と懸念を示した。
だが、大手2行は楽観的だ。ある幹部は「弱小銀行は厳しいリストラを強いられるだろう。我々にとっては市場シェアを高めるチャンスだ」とほくそ笑んだ。
By Patrick Jenkins and Victor Mallet
(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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