欧州の政府債務(借金)危機や「超円高」が続く2012年。企業トップは厳しい経済環境をどう乗り切るのか。5日、経済団体の新春パーティーで聞いた。
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「新たな挑戦もやり遂げ、日本経済再生の年にしよう」。経営者らのキーワードを一文にまとめると、こんな思いがみえてくる。
世界経済の先行きが見通せないため、株価が回復したり、円高がおさまったりすることを予想する経営者は少ない。ただ、旭化成の藤原健嗣社長が「心配ばかりしていても仕方ない。とにかく動くこと」と語るなど、前向きな発言が相次いだ。
東日本大震災からの復興のためには、企業どうしが国内で競争ばかりしていないで連携する時代に入るべきだ、と言うのは三井物産の飯島彰己社長。「農林水産業や再生可能エネルギー、医療などは規制緩和や支援策で新たな成長産業になる余地がいっぱいある」という。
液晶テレビ事業がふるわず、電機業界は新たな展開を模索している。ソニーの中鉢良治副会長は「技術に基づいてイノベーション(革新)を起こし、新しい日本を作り上げたい」。環境や医療分野にITを活用する考えだ。三菱電機の下村節宏会長も「技術で発信する力で道は開ける」。
昨年末には、野田政権の消費増税プランが動き始めた。「先送りしないこと」と言う日産自動車の志賀俊之・最高執行責任者は「借金しながら社会保障を続けるのは無理がある。しっかり議論し、決断し、実行することだ」と評価した。キッコーマンの茂木友三郎名誉会長も「やむを得ない。早く財政再建しないと経済成長の足を引っ張る」と語るなど、賛成意見が多かった。前提として三菱重工業の大宮英明社長は「歳出削減も必要」と求めた。
一方、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長ら消費者に近い業界のトップは慎重な意見だ。石油元売り大手の出光興産の天坊昭彦会長は「まずは(物価が下がり続ける)デフレ克服が大事」と訴える。
東京電力福島第一原発の事故を受け、今年は政府がエネルギー基本計画を根本から見直す年でもある。ただ、企業トップはやはり脱原発に慎重な意見が多い。
NTTの三浦惺(さとし)社長は「今と10年後、20年後では、自然エネルギーや原発、化石燃料のベストミックス(最適な電力の活用)がそれぞれ違う。冷静な議論をしてほしい」という。東京証券取引所の斉藤惇社長は「原発をやめて、国内総生産(GDP)を上げろというのは論理として成り立たない」。安全性を確認しつつ原発の再稼働が必要だとする意見が目立った。
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