2011年12月15日10時32分
期間従業員やパートなどの有期雇用の規制を検討している厚生労働省は14日の労働政策審議会で、有期雇用で働ける通算期間に上限を定める仕組みを提案した。上限を超えた場合は、契約満了の時期を決めない「無期雇用」に転換し、安定した雇用を増やす狙いだ。今後の焦点は、上限年数を何年にするかなどの制度設計に移るが、労使の意見の隔たりは大きい。
有期雇用の期間に上限を設けると、企業がその前に契約を終える「雇い止め」が増えるとみられている。
実際、4年前に同様の制度を導入し上限を2年とした韓国では、有期雇用労働者のほぼ半数が雇い止めされたとの調査報告がある。
このため審議会の労働側委員は、2年は短いが、あまり長いと無期雇用への転換が遅れるとして「上限は3~5年に」と主張する。
これに対し使用者側委員は、スムーズな無期雇用への転換には、人材育成と評価ができる十分な期間が必要として「少なくとも7~10年は必要」という。雇い止めの増加を防ぎながら無期雇用への転換を促すには何年にすればよいかの判断は、なかなか難しい。
もう一つの大きな論点は、有期雇用契約が上限に達した後、職を離れて一定期間がたてば、再び同じ会社と新たな有期雇用契約を結べるようになる「クーリング期間」のあり方だ。
労働側はクーリング期間を設ければ結局、同じ使用者が同じ労働者を繰り返し雇うようになり、規制の意味がないと反対している。
派遣労働では厚労省が3カ月のクーリング期間を置く方針を示したが、これは「悪用」が相次いだ。一般業務の派遣労働者の場合、派遣期間が3年を超えると派遣先企業に直接雇用の義務が生じるが、その回避のため、3カ月超の直接雇用や請負契約をはさんで再び派遣契約を結ぶ手法だ。
一方で使用者側は、クーリング期間がなければ、労働者も慣れた仕事に応募できなくなる、などと主張。「3カ月、または数カ月単位」の導入を求めている。
そもそも、有期雇用からの転換を目指す「無期雇用」も、人件費増を懸念する使用者側の声を受け、正社員でなくても、雇用期間を決めない無期雇用であれば良いとされた。このため処遇がどの程度良くなるのかは不透明だ。(松浦祐子)
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〈有期雇用〉 雇用契約に期限が定められた働き方。無期雇用で定年まで働ける正社員に対し、非正社員の大半は有期雇用だ。契約社員、期間従業員、パート、派遣社員など様々な呼称や形態がある。厚労省の調べでは、有期雇用の労働者は約1200万人いる。企業が人員削減をする際は契約期間満了による「雇い止め」がされがちで、不安定な雇用の原因となっている。
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