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- 2011/9/25 22:53
一山越えても、また一山。今週も引き続き不安定な欧米の金融市場が焦点となりそうだ。国際通貨基金(IMF)が発表した「世界経済見通し」と「金融安定報告」は、欧州の政府債務と金融問題に対し異例の警告を発している。
独大手機械のシーメンスは大手仏銀の預金を5億ユーロ解約し、銀行子会社を通じて欧州中央銀行(ECB)に預け入れた(フィナンシャル・タイムズ)。中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)は大手仏銀や不正取引による巨額損失を被ったUBSとの為替スワップ取引を停止した(ロイター)。
国際決済銀行(BIS)が「国際金融四季報」で、今年1~3月期について、信用収縮の鳥瞰(ちょうかん)図を示した。ギリシャから独仏の銀行が資金を引き揚げる。独銀はスペイン、アイルランド、ベルギーからの資金回収に急だ。イタリアについては独銀が資金を引き揚げる一方、仏銀が追い貸しをしている。
そのドイツからは仏銀と米銀が資金を引き揚げ、スイスへの資金移動が起きている。さらにフランスからは米銀の資金回収が目立つ。お互いに疑心暗鬼が募る中で、椅子取りゲームのような資金の取り合いが起きている。
貸し出しの削減がもたらすのは、経済の縮小である。IMFによれば、ユーロ圏の実質成長率は12年には1.1%へとさらに低下する。失業率は9.9%と米国以上だ。ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアそしてフランスでは、経常赤字が続く。
ドイツ、オランダに経常黒字が集中する一方で、政府債務危機に直面している国々は財政と経常収支の「双子の赤字」に悩む。ドイツが財政緊縮路線を修正しないことには、欧州全体の緊縮と景気落ち込みの悪循環は深まるばかりだろう。
一方、米国ではムーディーズ・インベスターズが21日、バンク・オブ・アメリカ、シティグループなど大手米銀を格下げしたことで、追加緩和も水をかけられた。ただでさえ「重大な下振れリスク」(米連邦公開市場委員会の追加緩和の発表文)に直面する米経済は、貸し渋りにも見舞われかねない。
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は22日、「ユーロ圏は我々の次回会合までに、欧州金融安定基金(EFSF)の柔軟性を増しているであろう」とする声明を発表した。
EFSFの柔軟性増進(increase the flexibility)とは? ESFSはユーロ加盟国政府の保証を得て債券を発行し、その資金で財政危機に陥ったユーロ圏諸国を支援する仕組み。
そのEFSFについて(1)政府保証枠を4400億ユーロから7800億ユーロに拡充する(2)問題国への融資ばかりでなく、国債も買い入れられるようにする(3)加盟国政府を通じて銀行に増資資金を提供できるようにする――などの機能強化を、ユーロ圏首脳会議はすでに合意している。関所は各国の議会による承認が得られるかどうかだ。
国債を買い入れるといっても、国債発行残高はイタリアとスペインだけで2.1兆ユーロにのぼる。EFSFは保証枠をまるまる使い切るわけにはいかないので、危機が各国に飛び火するような事態には7800億ユーロでは間に合わない。
そこで、EFSFが自ら発行した債券を担保に、ECBから資金を借り入れてはどうかという案が取りざたされる。EFSFが保証を付けて、ECBに問題国の国債をもっとたくさん購入してもらってはどうかという案もある。
国債を大量に保有する欧州の金融機関への公的資金注入も重要課題だ。それが間に合わなければ、銀行間取引の全額保護といった手法が再度浮上するかもしれない。
いずれにしても、経済と財政に余力のあるドイツが一肌脱がないと、危機収束はおぼつかない。次回のG20財務相会議は10月14~15日。残された時間は3週間もない。その時は刻々と迫る。
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