- 2011/9/24付
日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)が、協調を演出するだけでは意味がない。世界経済の危機回避に向けた決意を行動で示さない限り、市場の動揺は収まらない。
22日のG20財務相・中央銀行総裁会議は、株安やユーロ安に背中を押される形で緊急声明を発表した。欧州の信用不安や世界経済の減速に強い懸念を表明し、必要な政策手段を総動員する方針を確認した。
しかし、9日の主要7カ国(G7)財務相・中銀総裁会議の合意文書をなぞった表現が多い。10月中旬までに欧州金融安定基金(EFSF)の機能を強化するという部分が目を引く程度で、各国・地域の対応が具体性を欠くのは明らかだ。
内容の乏しい声明を連発している余裕はない。問題への対処が遅れるようなら、事態収拾のコストが膨らむ。G20それぞれが具体的な行動を積み上げ、世界経済や市場の安定に協力しなければならない。
最も重要なのは欧州不安の沈静化である。欧州連合(EU)などはギリシャの債務不履行を避けるため、当面の資金繰りを支える80億ユーロ(約8200億円)の融資を急ぐべきだ。その前提となる財政赤字の削減目標をギリシャが達成する必要もある。もちろん7月に合意した追加支援の確実な実行は欠かせない。
心配なのは南欧の国債を保有する金融機関への打撃だ。日米欧の中銀がドル資金の無制限供給を決めたのは妥当だろう。国際通貨基金(IMF)は、EUの銀行が2000億ユーロの損失を抱えている可能性があると指摘した。厳格なストレステスト(資産査定)を実施し、必要な資本を増強すべきではないか。
経済成長と財政健全化の両立は先進国共通の責任である。米国は4470億ドル(約34兆円)の経済対策と金融緩和の強化で景気を下支えする一方、中長期的には財政赤字の削減に取り組む。日本も復興需要を景気回復につなげながら、増税を含めた財政再建策を実行する。こうした努力を着実に続けるしかない。
新興国は景気回復と物価安定の両立が問われる。22日開いた新興5カ国の財務相・中銀総裁会議は「先進国が元の成長軌道に戻るのが緊急課題だ」との声明を発表した。だが先進国の財政・金融政策を批判するだけでは困る。インフレに悩む中国やインドは、金融引き締めが行き過ぎないよう注意する必要がある。
G20は11月までに、すべての国・地域の政策に関する行動計画をまとめることを決めた。G20の行動以外に現状を打開するすべはない。
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