(3月11日付・読売社説)
日本の2大証券取引所が、重い腰を上げた。
東京、大阪の両証券取引所が、経営統合に向けて近く協議に入ることになった。
世界の証券市場は、中国などの新興マーケットが急成長する一方、欧米では国境を越えた取引所の再編が加速している。このままでは、日本の存在感は低下するばかりだ。
統合は巻き返しへの第一歩となる。東証と大証は早期に合意し、アジアの主要マーケットとして生き残る戦略を進めるべきだ。
東証は現物株の取引で国内の9割を占め、上場株の時価総額は世界3位の規模である。片や大証は株価指数先物などデリバティブ(金融派生商品)の国内取引で5割の占有率を持っている。
統合が実現すれば、それぞれ得意の部門を生かしたバランスのよい市場が誕生する。投資家の利便性が向上し、市場の国際競争力が高まると期待されよう。
統合後は、両取引所を現物取引とデリバティブといった、機能別に再編する案が有力という。
経営の効率化も重要だ。取引の電子化で、大量の注文を高速処理する売買システムの性能が市場の魅力を左右する時代になった。
双方のシステムを一本化することで、設備投資の負担が軽減されて、積極的な増強や高度化が可能となるだろう。
これまでも東証と大証の統合は必要性が指摘されてきたが、なかなか具体的な動きにつながらなかった。どちらも独立性の維持にこだわったためだ。
だが、手をこまぬいているうちに、東証の売買規模は中国の上海証券取引所に抜かれて2年連続で世界4位に甘んじ、深セン証券取引所にも肉薄されている。
東京市場の平均株価は、前日の米国の株価に連動しがちだが、最近は当日の上海株の値動きに引きずられることも多くなった。
アジアでの影響力が先細りになりかねないという危機感が、統合推進のバネになったのだろう。
2月中旬に発表されたニューヨークとドイツの証券取引所の合併にも背中を押されたようだ。
東証と大証のトップは月内にも会談するという。東証と大証のどちらのシステムを使うかなど、主導権をめぐる調整は難しいかもしれないが、互いが利害を主張しあう内向きの論議に終始したのでは意味がない。
日本の証券市場をいかにして再生させるか。大局的な見地で、話をまとめてほしい。
(2011年3月11日01時01分 読売新聞)
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