- (1/2ページ)
- 2012/6/11 14:00
(2012年6月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国は足元で景気重視にカジを切ったようにみえるが、世界的な金融危機の最中に実施したような財政出動の必要はないことを直近の経済指標は示している。
■「急落」ではなく「ソフトランディング」
利下げが発表されたとき、中銀は経済の急減速に対応するため予想以上に積極的な緩和策に出たとみる投資家も多かった。だが、週末に発表された5月の指標はそこまでひどい内容ではなく、多くの人々が恐れたような悲観的状況とはほど遠いものだった。
「国内総生産(GDP)の8%成長を今年達成するには、本格的な刺激策よりも政策の微調整で十分だろう」とCLSAアジア・パシフィック・マーケッツの上海在勤アナリスト、アンディ・ロスマン氏は話す。
それでも中国にとって10年超ぶりの低成長となるが、昨年の9.2%からの「急落」を回避し「ソフトランディング」に誘導したと言えるだろう。
5月の経済指標の多くは間違いなく停滞を示している。固定資産投資と小売り販売は前月より軟調で、工業生産高はやや増えたものの長期的な平均値を大きく下回った。今四半期(4~6月期)の数字が3年ぶりの低水準に陥るのは避けられないようだ。
しかし他のデータには希望の光が差し始めている。
5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.0%上昇にとどまり2年ぶりの低水準。景気浮揚に向けた金融財政政策の支障となるインフレ懸念も後退した。さらに5月は輸出も輸入も好調で、外需・内需の回復が鮮明となった。
■中国の成長も欧州の行方次第
中国の経済成長は欧州の債務問題が深刻な世界的危機に発展するかどうかにかかっており、中国政府ができることは少ないとみるアナリストも多い。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミスト、ル・ティン氏は「ギリシャのユーロ離脱が起きなければ、景気刺激策の規模は比較的小さくなる」との見方を示した。
ユーロ圏の不安が急激に悪化しない限り、中国政府による灌漑(かんがい)や鉄道敷設などの公共事業投資の増額はGDP比で1%をやや下回る程度になると同氏は予想する。
国際通貨基金(IMF)は先週北京で行われた中国側との年次政策協議で同様の結論に達した。住宅市場の低迷や投資主導型成長からの脱皮をめざす政策など中国経済が直面するリスクはいずれも欧州危機の脅威に比べればさほど深刻ではないとしている。
温家宝首相は先月、政府は経済成長支援に力を注ぐと述べ、民間部門の停滞を補う公共投資を加速させる姿勢を明らかにした。
だが、政府高官は08年後半の大規模な景気刺激策を政府が再び繰り出すとの臆測が広がらないようけん制。当時の刺激策で債務が急増し、インフレ上昇を招いたためだ。
もし5月の指標に見られた景気の安定が一時的なもので、状況が今後悪化すれば、中国は即座に方針を変えるとみる専門家もいる。
IMFのデビッド・リプトン筆頭副専務理事は「中国は必要とあらば強力な対応策をとる余力がある」と指摘した。
By Simon Rabinovitch
(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
No comments:
Post a Comment