09/10 ウォール街デモ―「99%」を政治の力に

金融資本主義の総本山であるニューヨーク・ウォール街でのデモが勢いを増している。

「金持ちは1%/われわれは99%」「富める者に税金を/貧しい者に食べものを」――失業者、銀行の貸し渋りで経営難の中小事業者、学資のローンが返せない学生など、リーマン・ショック後の不況で生活が暗転したままの人々が声をあげた。首都ワシントンにも波及し、主要労組も参加に踏み切った。

バブル崩壊後の過重な債務の圧力で経済全体が低成長を強いられ、国民の間で格差が広がっている。日本や欧州にも共通する構図だ。

リーマン・ショック後に登場したオバマ大統領は就任するやすぐに大型の景気対策に踏み切ったが、昨年の中間選挙に敗れ、富裕層への増税で貧困層を支える道は阻まれた。


金融危機を避けるためウォール街の大銀行には巨額の資本が注入された。しかし、各銀行は政府の管理を嫌って貸し渋りなどで利益を確保し、早々に公的資金を返済した。再び巨額ボーナスを懐にする幹部が相次ぐ。

景気浮揚を狙った米連邦準備制度理事会による金融の量的緩和政策は、株価を一時的に浮揚させてウォール街から歓迎されたものの、結局はガソリンなどの値上がりを招き、米国経済の最大の病根である住宅市場には改善効果が見られない。

失業率は9%を超え、貧困世帯の割合も上がる一方。弱い立場の人々は放置され、相対的に余裕のある保守中間層を基盤とした増税反対の「茶会」運動がワシントンの政治を振り回しているのとは対照的だ。

ただ、優勝劣敗を旨とする茶会の極端な主張には疑問も広がる。それは、大富豪のウォーレン・バフェット氏が「金持ちを甘やかすのはやめよう」と富裕層への増税を求めたことにも表れている。ウォール街のデモも、米国社会が持つバランスの復元力を具現化しているとみることができよう。

デモはいま、政治に「99%の人々の肉声を聞いてほしい」と切望している段階だろう。これが失望に変わる前に、政治がどうこたえていくのか。

オバマ大統領はデモを「不満の表れ」と評したが、当面の雇用対策と中長期の財政健全化を両にらみしている自らの政策にこの「不満」をすくい上げ、求心力の再生につなげる好機を見るべきではないか。

欧州の債務危機で世界経済が動揺する折、米国までぐらついては困る。機敏な対応で「雨降って地固まる」としてほしい。

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