26/09 サービス業で巨大商談会 中国、産業構造転換へ布石 アジアBiz新潮流 中国総局長・品田卓



2011/9/26 7:00
 中国がサービス産業でも大国化をめざす布石を打ち始めた。世界的な商談会の場である広州交易会のサービス版を創設する準備に入った。世界の工場としての製造業が人民元や労働コストの上昇で揺らぎ、サービス業へシフトする構造改革にようやく本気で取り組み出した形だ。だが、規制が厳しく、海外の目はまだ冷ややかだ。
地方政府がサービス産業誘致に動き出した(天津市浜海新区のアニメ産業パーク)
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地方政府がサービス産業誘致に動き出した(天津市浜海新区のアニメ産業パーク)
 「サービスの交易会を北京で開催したい。協力してもらえないか」――。中国政府が海外関係者にこう打診し始めた。情報、流通、観光、運輸、金融……。サービス分野の対中貿易・投資の拡大をにらむ。
 李克強副首相は22日、サービス業の発展計画編成会議を招集。「現代物流、設計コンサルティング、電子取引、健康サービスなど新業態を育てたい」と力説した。
 サービス業重視へカジを切ったのは、中央だけではない。
 天津市の崔津渡副市長は「産業構造調整を通して経済発展を促進したい。すでにアニメ産業が進出。金融業にも期待する」とサービス分野での企業誘致に意欲を示す。特に金融は集積地を設け、中国版ウォールストリートをめざすという。
 河北省唐山市の林澎・唐山湾生態城管理委員会主任は「医療・健康分野のサービス業に来てほしい」と語る。日本勢を念頭に、「先進的な健康診断、医療機関や介護施設などのサービス業務」に秋波を送る。
 重慶市はインターネット経由で情報サービスを利用するクラウドコンピューティング向けサーバーの集積地づくりに着手。黄奇帆市長は「将来のネット産業の中核。国内最大にしたい」と情報産業への熱意を示す。
 中国はサービス産業の発展が遅れている。国内総生産(GDP)に占めるサービス産業の比率は43%程度。先進国の70%前後には遠く及ばない。しかし、貿易不均衡是正に向け内需型産業を発展させる意味でも、膨らむ大卒者の失業対策の面でも、比率を早急に高める必要に迫られてきた。
 「人民元自由化のXデーは2015年」――。中国当局者が最近語ったとされる情報だ。まだ具体的な計画はないというが、15年までに人民元と他通貨との交換規制が撤廃され、資本市場自由化も進む可能性が出てきた。介入を通した相場管理は変わらないとみられるが、人民元上昇に拍車がかかるのは必至。輸出依存の高いモノからサービスへ産業構造を切り替える緊急性が一段と高まる。
 商務省によると、サービス業への外国投資は1~8月で356億ドルとなり、前年同期比19.91%増。全体の外資の伸びの17.71%より2.2ポイントも高くなった。だが、サービス投資がさらに拡大するかどうかは不明だ。
 サービス業は、モノ以上に規制が厳しいためだ。新交易会創設構想にしても、ある海外関係者は「規制緩和の方が先決」と協力に慎重姿勢だ。
 金融分野は、店舗、業務、預貸比率などあらゆる面で厳しい規制があり、新規参入しにくかった1980年代までの日本に似ている。情報産業は厳しい言論規制があり、検閲が前提。中国で情報を活用しなければ検閲対象から外すといわれても「リスクが大きく、サーバーを中国に置けない」と日本勢は否定的。旅行業は、外資系に中国人の海外旅行の取り扱いを5月に解禁したが、JTBを含む3社だけだった。
 医療サービスは別の意味でも難しい。日本自体が健康診断と観光をセットにして中国人に訪日を呼び掛けている。中国で同じ質のサービスが受けられるようになれば、訪日の利点が減る。
 中国は、大きな戦略的な目標を掲げても、それに向けた地道な戦術に欠け、空回りするケースが多い。今回は海外の声を聞き入れて規制緩和を進め、経済のサービス化を円滑に進めることができるか――。世界が注目している。

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