27/09 景況感は改善、先行きに警戒感 9月の短観民間予想



表:日銀短観9月調査の主な民間予測拡大日銀短観9月調査の主な民間予測
 日本銀行が10月3日に発表する9月の企業短期経済観測調査(短観)について、民間シンクタンク12社の予測が出そろった。東日本大震災で落ち込んだ生産が回復していることから、いずれも景況感が改善するとみている。だが、欧米の景気減速や円高により、先行きは厳しい見方が多い。
 短観は3カ月ごとに実施している。景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた「業況判断指数」(DI)を出し、経営者の景況感を表す。
 12社の予測では、大企業・製造業の景況感を示すDIは「0」~「プラス5」。震災前の3月調査の「プラス6」には及ばないものの、震災後初となった6月調査の「マイナス9」より改善するとみている。

27/09 復活した密室での政策決定  竹中平蔵 慶大教授



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2011/9/27 7:00
竹中平蔵(たけなか・へいぞう) 73年日本開発銀行入行。大阪大助教授、慶大教授などを経て01年経済財政・IT担当相、02年経済財政・金融担当相。04年参院議員。経済財政・郵政民営化担当相、総務・郵政民営化担当相を経て慶大教授兼グローバルセキュリティ研究所所長。09年パソナグループ会長に就任。
竹中平蔵(たけなか・へいぞう) 73年日本開発銀行入行。大阪大助教授、慶大教授などを経て01年経済財政・IT担当相、02年経済財政・金融担当相。04年参院議員。経済財政・郵政民営化担当相、総務・郵政民営化担当相を経て慶大教授兼グローバルセキュリティ研究所所長。09年パソナグループ会長に就任。
 予算の季節を迎えている。いや、本来なら補正予算はすでに決定・実施され、来年度の本予算もとっくに概算要求のプロセスに入っていなければならない時期だ。それが大幅に遅れてしまった。しかし気がつけばこの1~2週間の間に、予算関連の重要項目が決定されつつある。ただし十分な議論もなく、驚くほど静かに、まさに野田佳彦首相の言うように「粛々と」である。
関連記事
・9月17日経朝刊1面「復興増税10年 所得税軸に」
・9月20日日経朝刊1面「国内立地に補助3000億円」
・9月21日日経朝刊5面「概算要求基準を閣議決定 『野田カラー』薄く」
・9月22日日経朝刊2面「前原氏『3次補正増額図る』」
・9月23日日経朝刊1面「所得増税、13年度から」
・9月25日日経朝刊2面「政府・与党の会議続々」
・9月26日日経朝刊2面「3次補正、11兆円超を確認」
 まず今回の震災の復興財源に充てる臨時増税について、野田首相は16日、期間10年、所得税・個人住民税を軸に検討するよう政府税制調査会に指示した。消費増税は社会保障目的に温存し、法人税は予定していた減税を3年間圧縮する方向を示した。
衆院予算委で答弁のため手を挙げる野田首相(26日午前)=共同
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衆院予算委で答弁のため手を挙げる野田首相(26日午前)=共同
 その後この問題については、22日に民主党税制調査会が所得増税は来年度からの開始を見送り、2013年度から10年間とする方向で調整に入った。景気に配慮し負担を先送りするものだ。ただし法人税は来年度から実効税率を5%引き下げたうえで3年間に限り減税幅の範囲で増税することとされている。
今週の筆者
月(市場)小平龍四郎
竹中平蔵
慶大教授
水(企業)西條都夫
木(経済)滝田洋一
金(企業)田中陽
 来年度予算に関し政府は20日、ようやく概算要求基準を閣議決定した。民主党政権発足後、最初の概算基準となった昨年の内容をほぼ踏襲した形で、野田政権の独自色は見当たらないと指摘されている。公共事業など政策経費を10%削り、その財源を成長戦略に当てる7000億円規模の特別枠「日本再生重点化措置」に使うという内容だ。
■予算と景気の関係をどう見るのか
 これらに共通している問題がある。それは、なぜ10年間の増税なのか、なぜ所得税増税なのか、来年度予算の規模と景気の関係をどのように考えているのか、といった政策論議が全くといってよいほど聞こえてこないことだ。つまり、プロセスが見えないのである。
民主党の前原政調会長に、政府税調の復興増税案を手渡す安住財務相=右=(16日午後、衆院第2議員会館)=共同
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民主党の前原政調会長に、政府税調の復興増税案を手渡す安住財務相=右=(16日午後、衆院第2議員会館)=共同
 野田内閣に期待した一つのことは、国家戦略会議のような場で、かつての経済財政諮問会議のようにオープンな政策論議をすることだった。しかし予算は首相の指示という形で、そして税制は税調の議論を経て、それぞれ財務省が主導し密室で実質的なことが決められていく。オープンな議論は、国民の政策への理解を深め、内閣への支持を得るためにも有効なはずなのに、である。
 こうした傾向は、ここにきてさらに加速したようだ。野田首相は、「政府・与党」の枠組みを使った新たな会議を多数発足させている。政策の最高意思決定機関と位置付けた「政府・民主三役会議」の設置に続き、来年度予算編成に関する政府・与党会議も新設した。一方で「国家戦略会議」の制度設計の動きは鈍い。
 このように、司令塔をつくらず、クローズドなやり取りをした上で官僚がとりまとめるというやり方は、遅れた予算編成を短時間で行うことを可能にするため、政権にとっては確かに便利な一面がある。しかし結果的に、政策へのマクロ経済的な配慮が欠如すること、幅広い合意形成が得られず後になって混乱を招く可能性があること、などデメリットは大きい。
■マクロ政策欠く不十分な円高対策
 例えば、3次補正に盛り込まれる円高対策だ。野田首相は19日、円高に苦しむ企業の国内投資を後押しするため、2011年度第3次補正予算案に3000億円規模の雇用創出産業立地補助金を盛り込む考えを明らかにしている。しかしこれは、事後的な救済金額としては極めて不十分なことに加え、そもそも円高を食い止めるためのマクロ経済政策は何も議論されていない。また民主党の前原誠司政調会長は21日、復興・円高対策を盛り込む第3次補正予算案について、政府が検討している規模の増額を目指す考えを表明している。政府・与党としての意思決定は、今後さらに混乱する可能性もある。
 粛々と、霞が関主導で政策を進めるのは一見容易な方法であり、現実に古い自民党でとられた形態だ。しかしそれは、後に問題を起こし、長期には高いコストになる可能性がある。またそもそも、民主党が公約した政治主導の政策決定のあり方とは大きくかい離している。