01/09/2010 中国上場企業、6月中間41%増益

 【重慶=戸田敬久】中国の上場企業の2010年6月中間期の純利益は合計で7849億元(約9兆7300億円)と前年同期に比べて41%増加した。中国政府による景気対策を受け、家電や金属、自動車など内需関連が好調だった。ただ、銀行や石油関連など上位10社で純利益全体の5割強を占めており、中小企業は伸び悩んだ。6月末時点では、在庫など棚卸し資産が急増しており、今後の業績には不透明感も出ている。


中国では自動車販売が好調だ=ロイター


 国営新華社系の上海証券報が集計した。上海と深センの株式市場に上場する企業のうち、31日までに6月中間期決算を発表し前年同期と比較できる1947社が対象。上場企業のほぼすべてが含まれている。

 業種別では、農村地区での優遇販売策が追い風になった家電など電子関連の純利益が同11倍に増えたほか、インフラ設備向けが順調だった金属関連も同10.5倍と大幅な伸びとなった。一方、人件費高騰などが響いた繊維関連は同11%の減益となり、IT(情報技術)関連も同9%減少した。

 好調な内需を反映してエアコン大手の広東美的電器が同56%の増益となったほか、鉄鋼大手の宝山鋼鉄は同12倍の大幅増益。自動車大手の上海汽車集団の純利益は同4倍になった。

 純利益の額では大型国有企業が上位に並ぶ。同28%増の846億元だった商業銀大手の中国工商銀行を筆頭に中国建設銀行、中国石油関連大手の中国石油天然気(ペトロチャイナ)などが続く。上位10社で純利益全体の5割強を占めた。

 一方、中小企業の業績は伸び悩んだ。昨年10月に深セン市場で開業したベンチャー企業向け市場「創業板(中国版ナスダック」に上場する105社の純利益は同26%増の30億元にとどまり、増益率は全体平均を下回る結果になった。

 上場企業全体の売上高は7兆9146億元と同42%増加した。赤字企業は247社と全体の13%で前年同期より5ポイント改善した。7~9月期には電子部品、自動車、医薬などを中心に396社が業績が前年同期に比べて改善するとの見通しを発表している。

 ただ、金融業を除いた1908社の6月末時点の棚卸し資産は合計で2兆3927億元と前年同月末に比べ39%増えた。中でも中国政府が取引抑制策を打ち出した不動産業は同48%増の7647億元となり、増加が目立つ。

 好調だった家電や自動車でも「景気対策疲れから、家電や小型車の在庫が積み上がり始めている」(外資系金融機関)との指摘が出ている。

01/09/2010 イラク米軍が戦闘任務終了

 【ドバイ=太田順尚】米軍のイラクでの戦闘任務が31日、正式に終了した。約5万人の駐留米軍は2011年末の完全撤退を視野にイラク治安部隊の訓練、支援に特化することになり、イラク戦争は03年3月の開戦から7年5カ月を経て大きな節目を迎えた。マリキ首相は同日、「イラクは今日、主権と独立を得た」と述べ、今後の治安維持に自信をにじませた。ただ、宗派間の対立や過激派によるテロが続く中、新政権樹立は難航しており政情安定には課題が山積している。






31日、イラクを訪問したバイデン米副大統領(左)とイラクのマリキ首相(バグダッド)=ロイター

 マリキ首相は「イラク治安部隊は米軍の任務終了後も治安を維持できる能力がある」とも強調。31日の式典出席のためバグダッド入りしたバイデン米副大統領も、イラクの治安について「まったく問題なくなるだろう」との見通しを示した。

 すでに米戦闘部隊は19日に撤収を完了。オバマ大統領は31日にテキサス州の米陸軍基地を訪問し、イラクから帰還した米軍兵士を慰労する。

 ただ、米軍が駐留した7年5カ月は、度重なる暴力とイスラム教シーア派とスンニ派による根深い対立が暗い影を落とした日々だった。北部のクルド人を含めた民族間の争いも激しさを増した。

 さらに開戦後には国際テロ組織アルカイダ系のテロリストらが流入し、治安が極度に悪化。06、07年には毎月2千人を超える市民が犠牲となり、内戦状態と形容されるほどの事態に陥った。開戦以来の民間人の死者は10万人に上り、4400人の米兵が犠牲となった。

 バイデン副大統領は31日、マリキ首相らと相次ぎ会談し、新政権樹立に向け難航する連立協議の進展を促した。7月に続く副大統領のイラク訪問は、米国が抱く米戦闘部隊なきイラクへの懸念の大きさを物語る。

 米軍の今後の任務は軍22万人、警察44万人からなるイラク治安部隊への助言や訓練などに移行。治安が急激に悪化した場合のみ、イラク治安部隊の戦闘を補佐するとしている。だが、米戦闘部隊撤退を見透かすように軍施設や警察署を狙ったテロが相次ぎ多くの市民が巻き込まれた。マリキ首相は治安部隊に厳戒態勢を指示したが、治安部隊の能力そのものへの懸念から、オバマ政権は戦闘任務の終了を急ぎすぎたとの声も出ている。

 治安活動を指揮すべき政治も、3月の連邦議会選後の連立協議が難航し、次期政権の枠組みがまだ見えていない。泥沼の宗派間抗争が続けば、06、07年の状況に逆戻りする懸念もある。イラク国民は、米国の戦闘任務の終了を、自立への期待と不安が入り交じる気持ちで迎えている。