<1950年からの歩み>日経平均、競争力映し60年


 日経平均株価はきょう9月7日、算出開始から60周年を迎えた。日本を代表する225社で構成する日経平均は、戦後経済の足取りと産業競争力の変化を日々刻んできた。足元では9000円前後で低迷し、日本経済の先行きへの不安と危機感を映し出している。再生に向けた課題は何か、採用銘柄の歴史や業績動向などから探った。


 戦後復興は繊維や海運が支え、高度成長はインフラ関連が主役。技術力と低コストで世界の頂点に立った後は不況に苦しみ、今は産業のリード役復活を待っている――。日経平均60年の歴史を採用銘柄の取引高で振り返ると、こんな日本経済の姿が浮かび上がる。

 株式の取引高は市場での人気を示す尺度。日経平均の算出が始まった1950年から20年ごとに、その年の採用銘柄の取引の多さを調べた。90年と2010年は売買代金、売買代金の正式なデータのない50年と70年は売買高を使った。




 算出を開始した50年は、朝鮮戦争の「特需」で日本経済が復興に向かった時期だ。国民生活の向上を先取りする格好で東洋レーヨン(現東)、日東紡績など繊維株の売買高が膨らみ、貿易拡大の期待で日本郵船などの海運株も商いを集めた。

 20年後の70年は高度経済成長期。外資流入規制の緩和が進み、日立製作所や東京芝浦電気(現東芝)などのハイテク株が活発に売買された。

 90年は日経平均が史上最高値を付けた翌年。株式相場は下り坂にあったが、バブル崩壊の影響はまだ色濃く出ていない。売買代金上位に目立つのはソニー、パイオニアといった家電メーカー。大量生産方式のモノづくりがまだ競争力を維持していた。




 算出60周年の今年は、年初から9月3日までの売買代金累計の上位10銘柄のうち、4つを金融が占める。増資に絡む思惑人気で取引が増えた。

 市場全体の商いが細る中で増資銘柄に売買が集中したのは、日本経済をけん引する産業の主役を探しあぐねている裏返しともいえる。金融以外で上位に入ったのは自動車と電機。海外企業との競争が激化する中で、次世代技術をテコにした中核業種の復活が日本株再生のカギを握る。

 産業構造の変化は、日経平均採用銘柄の移り変わりからも検証できる。60年間、継続採用されている企業は95社と全体の約4割で、約6割が入れ替わった。

 構造変化を端的に示すのがサービス業。算出開始時に13社あった採用銘柄は11社が入れ替わり、現在採用されるのは東宝と東京ドーム(旧後楽園スタヂアム)だけ。当初は松竹、日活など映画会社が多かったが、映画が大衆娯楽の主役から去り、株式市場での存在感は薄れた。今ではネット関連のヤフー、ゲームのコナミ、警備のセコムなど戦後生まれの企業が採用され、生活の多様化を映している。

 欧米の主要株価指数の銘柄入れ替えのスピードはもっと速い。

 米ダウ工業株30種平均は1896年に12社で算出が始まり、当時の採用企業で今も残るのはゼネラル・エレクトリック(GE)のみ。日経平均算出が始まった1950年からではGE、化学のデュポンなど7社で、全体の約2割にとどまる。ウォルマート・ストアーズ、マイクロソフト、シスコシステムズなどの若い企業が次々と採用された。

 英フィナンシャル・タイムズ30種平均でも算出開始(35年)からの採用は機械のGKN、製糖のテート・アンド・ライルだけ。食品のキャドバリーが米クラフト・フーズに買収されて指数から外れたように、外国企業による買収などで入れ替わる例が多い。

 日本の場合、大企業の経営が長く安定し、豊富な資金や高い技術を原動力に大企業自身が新しい成長分野を取り込んでいった。起業や買収が活発な欧米と違う点だ。だが長い不況で新産業の「ふ化器」の役割を果たす余裕が大企業になくなってきた。産業の新陳代謝を活発にするには、企業や投資家がリスクを負いやすくする税制の手当てや一段の規制緩和が必要だとの指摘は多い。










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source: nikkei