11/05 サプライチェーンの破壊

2011年5月11日0時26分

 大震災は日本が世界に誇る製造業のサプライチェーンを破壊した。サプライチェーンとは、完成品が製造されるまでに必要な部品や材料の製造・加工などの分業体制のこと。

 自動車産業の場合、3万点以上の構成部品から1台の完成車が製造されるまでに大中小の自動車部品・材料メーカーが多層にわたる分業を行う。中には、多数の高品質部品や世界最高の技術水準を持つ部品が含まれ、世界の自動車メーカーに供給される。

 地震・津波・原発の複合的な被害により、数千社規模の自動車関係メーカーが被害を受け、サプライチェーンが破壊・分断された。機械加工部品、電子制御部品や専用半導体、化学材料分野の被害が大きく、影響は世界に及んだ。

 その結果、日本全国で自動車生産が一時的にストップし、生産再開後も稼働率が上がらない状態である。海外生産への影響は、輸送中の在庫がなくなるこれから深刻化する。

 被害を受けた企業による復旧努力が続いているが、多数の中小部品メーカーを含めた生産の完全復旧へのめどは立たない。自動車が生産できない分、人件費や機械リースなどの固定費負担に苦しむ中小部品メーカーが全国的に増大している。

 救いは、世界市場が拡大基調にあること。サプライチェーンの復旧により、製造が短期間で回復し拡大する可能性も大きい。ただ、今後は、同一地域や同一工場での集中生産を避けること。非常時に備え数カ月間持ちこたえるための蓄えが問われる。それが、収益低下、株主配当の低下を招いても、である。

 自然災害に社会全体で対処する日本文化が賛美される今、各社が経営理念を問い直す良い機会である。(窯)

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 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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