30/06 多極化時代のIMF改革を

2011/6/30付

 フランスのラガルド経済・財政・産業相が国際通貨基金(IMF)の専務理事に選ばれた。注目されるのは欧州不安や国際不均衡への対応だ。だが世界の多極化に合わせたIMFの改革を忘れてはならない。
 ラガルド氏の力量に大きな不安はない。過去最長の4年間にわたって仏財政相を務め、金融危機後の国際的な政策協調や欧州のギリシャ支援などに手腕を発揮してきた。
 しかし実力本位で透明性の高い選考だったとは言い難い。「IMFの専務理事は欧州から起用する」。多くの先進国が慣例に従い、メキシコ中央銀行のカルステンス総裁ではなくラガルド氏を支持した。「先進国主導の密室人事」という新興国の不満はかわせそうにない。
 ストロスカーン前専務理事の醜聞はIMFを傷つけた。まずは信認の回復を急ぐべきだ。ラガルド氏は国内の実業家と銀行の争いに介入した疑いが持たれている。IMFが再び不祥事にまみれるのでは困る。
 「世界経済の番人」としての中立性や公平性も試される。第1の関門はギリシャ危機の克服だ。欧州連合(EU)とIMFの追加支援は避けられないが、「欧州出身の専務理事による利益誘導」との批判を浴びないようにしなければならない。
 主要20カ国・地域(G20)は世界経済の不均衡を是正するため、公的債務や対外収支などの指標を使って7カ国の監視を始めることで合意した。その実務を担うのもIMFである。中国の人民元切り上げや米国の財政再建をはじめ、耳の痛い改革をより強く迫らざるを得ない。
 真価を問われるのはIMFの組織改革ではないか。ラガルド氏は「世界の変化に適応するIMFをつくる」と公約した。新興国の台頭に即して、中国やインドなどの発言力を高める工夫が欠かせない。
 IMFは昨年末、新興国・途上国の出資比率を42.3%に引き上げる改革案を承認した。先進7カ国(G7)の43.4%に匹敵する水準で、早期実現を目指す。こうした試みを着実に実行すべきだ。
 日本は米国に次ぐ世界第2位の出資国である。新たな専務理事が進めるIMF改革に重大な責務を負うのは言うまでもない。

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