30/06 IMF専務理事 ギリシャ危機収束が試金石だ

(6月30日付・読売社説)

トップの不祥事で失った国際通貨基金(IMF)の信認を回復する重責を女性が担う。

性的暴力事件で逮捕されて辞任したIMFのストロスカーン前専務理事の後任にラガルド仏財務相が選ばれた。60年以上のIMFの歴史で初めての女性トップである。

新興国のメキシコのカルステンス中央銀行総裁とのポスト争いだったが、欧州各国に加え、IMF最大出資国の米国や、中国がラガルド氏を支持して決着した。

就任早々、新専務理事の真価が試されよう。待ったなしの課題はギリシャ危機への対応である。

放漫財政の末に危機に陥ったギリシャは昨年5月、IMFと欧州連合(EU)による1100億ユーロ(約12兆7000億円)の支援策で、ひとまず救済された。

しかし、ギリシャの財政再建は進まず、わずか1年で、危機を再燃させてしまった。

信用不安でギリシャ国債の利回りは急上昇している。資金繰りに行き詰まり、大量の国債を償還できない債務不履行(デフォルト)に陥りかねない事態といえる。

そうなれば、ギリシャ国債を保有する独仏などの金融機関の経営に打撃を与え、欧州発の混乱が日米など世界に及ぶ恐れがある。

同じく財政危機で支援を仰いでいるアイルランドやポルトガルなどへの悪影響も避けられない。

IMFとEUは、ギリシャの当面の資金繰りを支えるとともに、1200億ユーロ(約13兆8000億円)規模の第2次支援策を7月に決定する方針を打ち出した。

ギリシャのデフォルトを回避し連鎖危機を防ぐため、IMFとEUが連携を強めるのは当然だ。

何より重要なのは、ギリシャが公務員削減や増税などの痛みを伴う緊縮財政策を誠実に実行することだ。国営企業の売却などで財政赤字を縮小する自助努力を重ねなければならない。

ラガルド氏は、IMFトップであって、欧州の利益の代表者ではない。ギリシャに改革を求める厳しい姿勢を貫き、世界経済を安定させる役割を果たしてほしい。

歴代のIMFトップは欧州出身者が、世界銀行総裁は米国が独占してきた。新興国は批判的だが、欧州の「指定席」は守られた。

しかし、急成長している新興国の存在感が増し、いずれ、慣行の見直しは避けられまい。

ラガルド体制のもとで、新興国の発言力を増大させるようなIMF出資比率の見直しや、欧米偏重でない組織が求められよう。

(2011年6月30日01時19分 読売新聞)

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