キャタピラーCEOが見る「中国減速」



米州総局編集委員 藤田和明

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2011/7/23 12:55
 「中国についてのコメントで締めくくりたい」。7月22日、米建設機械最大手キャタピラーの4~6月期決算。アナリスト向け説明会の最後の最後だった。中国市場の見方を聞かれ、IR(投資家向け広報)担当者がガイダンスは持ってないとかわした場面で、ダグラス・オーバーヘルマン会長兼最高経営責任者(CEO)が割って入った。同社の中国への見方を最後にきちんと説明しておきたい、そんな口ぶりだった。
 「我々はとても入念に中国を見ている。当社の見方は、中国は減速であって、クラッシュではない」。オーバーヘルマンCEOは、市場の過熱はそもそも分かっていたことで減速は健全、同社および建機業界にとっても一息いれるいい機会だと強調した。
 同社の中国拠点は設備過剰というわけでもなく、世界の拠点の中で生産品目を融通している。他の市場はなお好調だ。「中国はクラッシュが起きることを許すことはないだろう。彼らは過去30年、上手に綱渡りをしてきた」との見方を披露。景気失速までの心配はなく、またどこかで需要は反転してくるだろう、とした。
 米企業の中でも、キャタピラーほど中国市場に深く入り込んでいる企業は多くない。マクドナルドなどと並び、いち早くオフショアで人民元建て債券を発行した外国企業でもある。中国の製造拠点は12カ所、8000人超を雇用する。それだけに中国経済をどうみるか、キャタピラーのトップの言葉に市場関係者は耳をそばだてる。
 CEOがあえて中国の説明にこだわったのは、それだけリスク要因として神経質になっている証拠だ。インフレ圧力の高まりから景気引き締め策を繰り返す中国。不動産や建設需要が鈍化すれば、建機需要への影響は避けられない。業界調査では5月の中国の掘削機販売が前年割れと伝わる。日本のコマツや中国現地企業の三一重工などとの競争も激しくなっている。
 2011年4~6月期の売上高は前年同期比37%増、純利益は同44%増と高い伸びを示した。しかし、1株利益が事前予想に届かず、22日の株価は6%安と急落。「成長はすごいが、投資家はもっと高い利益率を期待していた」(UBSのヘンリー・クリム氏)。東日本大震災による部品調達の混乱や、原材料価格の上昇が利益率を圧迫した。
 株価水準自体、前年末から前日までに19%上昇し、史上最高値近辺に位置していた。過去2年余り、四半期決算が事前予想を下回ることがなかったキャタピラーだけに、今回の市場の失望は大きかった。それにCEOの中国減速発言が重なれば、成長期待一色からはいったん後退せざるをえない。
 マクドナルドやコカ・コーラなど消費財では、力強い中国需要が売り上げを押し上げている。一方で、資本財の代表、キャタピラーがともした変調のサイン。今年後半以降の企業収益を占ううえで、大事な注目点となってくることは間違いない。

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