政府、追加損失を回避 不良債権買い取りで - 3月末の回収額、簿価を163億円上回る

 政府が破綻金融機関などから買い取った不良債権の回収額が今年3月末時点で9兆7938億円となり、1996年以降の買い取り総額(9兆7775億円)を上回ったことが分かった。旧日本長期信用銀行と旧日本債券信用銀行の不良債権で回収額が買い取り額を4700億円余り上回ったことなどが背景。回収の実務を担う整理回収機構(RCC)は残る貸出先企業への返済要請などを今後も継続するが、不良債権買い取りによる追加損失は回避された格好だ。






 政府は破綻した銀行や信用金庫、信用組合を受け皿となるスポンサーに引き継ぐ際に、預金保険機構を通じて破綻金融機関が抱える不良債権を買い取ってきた。


96年以降に取得


 金融機関の再生を後押しする狙いで、96年以降、約160社からの買い取り総額は簿価ベースで9兆7775億円にのぼった。

 個別の買い取り額については、それぞれの金融機関の引当金の状況や回収可能性を検討。金融機関の帳簿上の金額を下回る水準で設定されたため、貸出先からの返済が着実に進めば、回収超過が生じる仕組みになっている。預保機構の傘下のRCCは2010年3月までに融資の返済や債権の流動化などで、9兆7938億円を回収。買い取り簿価を163億円上回った。

 買い取り額と回収額の内訳をみると、旧長銀(現新生銀行)と旧日債銀(現あおぞら銀行)では1兆1798億円の買い取り簿価に対し、回収額が1兆6545億円となった。ただ両行からは持ち合い株式なども2兆9421億円買い取っており、この回収は1兆7194億円と6割弱にとどまっている。

 また不良債権処理を加速するために、破綻していない金融機関から買い取った債権3533億円の回収額は1.9倍の6699億円に達する。


公的資金は9割


 バブル崩壊後の不良債権処理に苦しむ金融機関に対する支援では、政府は資本不足を補うために98年以降に公的資金も注入した。金融機能安定化法や早期健全化法、預金保険法などに基づく公的資金の注入総額(金融機能強化法は除く)は簿価ベースで12兆3869億円。今年8月末時点の回収総額は11兆3514億円で、こちらの回収率は9割を超えた。不良債権問題は、買い取りが始まった96年から14年もの期間を経て、ようやく「出口」に近づきつつあるといえる。

 もっとも、政府は金融不安の高まりを受けて96年4月に、預金の払戻保証額を元本1千万円とその利息までとするペイオフを凍結。国民の動揺を抑えるために破綻金融機関の預金を全額保護し、19兆円弱を戻ってこない資金として拠出している。


source: nikkei

不良債権[ bad [nonperforming] loans ]
金融機関が融資した後、約束通りに返済されなくなった、あるいは返済の見通しが立たない貸出金のこと。金融機関のバランスシートに、利益を生まない資産として計上されている。融資先が倒産した破綻先債権、金融支援先向けの要管理先債権などが代表例。

預金保険[ deposit insurance ]
銀行の経営が不振になったり信用恐慌が起きたりすると、預金が焦げ付いてしまう恐れがあるが、そのようなことのないよう預金にかける保険。保険料は預金という財産を受け入れる側(金融機関)が保険機関(日本の場合は預金保険機構)に支払うので、預金者は債権の一定部分の安全性を保つことができる。2005年4月のペイオフ全面解禁で、全額保護が続く決済用預金については普通預金に比べて高く設定された。

引当金[ allowance ; provision ; reserve ]
将来予想される特定の支出や損失に備えるために企業が積み立てるお金のこと。貸出金が返ってこないことに備えて計上する貸倒引当金が最もポピュラーな引当金。年金の支出に備えた引当金などもある。

金融機能強化法[ Financial Function Early Strengthening Law ]
金融機関の申請に基づき、国が公的資金を資本注入する枠組みを定める。2004年6月の国会で成立し、2兆円の注入枠を確保した。金融危機の恐れがあるときに発動する預金保険法に対し、危機の兆しがなくても経営基盤の強化を望む金融機関の要請で資本注入できる。政府はこの制度をテコに地域金融機関の再編を進め、金融システムを安定させる効果を期待している。08年12月に改正法が成立し、注入枠は12兆円に増えた。12年3月末までの時限措置。

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