08/12 欧州危機拡大 市場が催促する首脳の抜本策(12月8日付・読売社説)

欧州危機を収束できるかどうか、いよいよ緊迫の2日間を迎える。市場の信認を取り戻す抜本策が求められよう。
独仏などユーロ圏17か国を含む欧州連合(EU)首脳会議が、8、9日にベルギーで開かれる。欧州中央銀行(ECB)も8日、金融政策を話し合う。
欧州危機は、巨額の財政赤字を抱えたギリシャからイタリアに飛び火し、スペイン、フランスに拡大しつつある。深刻な事態だ。

会議を前に、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、独仏など「トリプルA」の6か国を含むユーロ圏15か国の長期国債格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。
さらに、6か国の保証を裏付けに欧州金融安定基金(EFSF)が発行する債券を格下げする方向も明らかにした。後手に回る政治の対応に不信を示した形だ。
欧州首脳らは、市場の警告を真摯しんしに受け止める必要がある。
危機収束策が不十分なら、S&Pは格下げに踏み切る。金融市場が一段と混乱し、危機国を支援するEFSFの機能も揺らぐ。負の連鎖に要警戒だ。
首脳会議の焦点は、ユーロを安定させる財政健全化策である。
メルケル独首相とサルコジ仏大統領は、財政赤字を対GDP(国内総生産)比3%以内に抑えるルールを破った国に自動的に制裁を科す方針で一致し、EU条約改正を会議に共同提案する。
放漫財政を食い止め、財政規律を強化するのは当然だ。独仏提案に沿い、欧州各国でバラバラだった財政の相互監視へ、明確な方針を打ち出してもらいたい。
何より必要なのは、危機拡大を防ぐ緊急措置だ。ユーロ圏が10月末に決めたEFSF拡大、ギリシャ債務削減、銀行資本増強はいまだに実施されていない。遅きに失する恐れがあろう。
これらの対策と連動し、ECBの役割がますます重要になる。
ECBは、イタリア出身のドラギ総裁が就任した直後の11月初め、2年半ぶりに政策金利を引き下げて年1・25%とした。
各国が緊縮財政に取り組むと、欧州景気は減速し、マイナス成長に陥ることが懸念される。景気下支えへ、ECBが追加利下げを検討する姿勢は歓迎されよう。
国債利回りの急騰を抑え、信用不安を沈静化するには、ECBがイタリアなどの国債を大量に買い支える措置も有効だ。
欧州が結束し、急いで行動することを世界は注視している。
(2011年12月8日01時30分  読売新聞)

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