02/12 テレビでオンエアされないホントの保険の話


保険コンサルタント 後田亨

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2011/12/2 7:14
 「やはりボツになったか……」。私事ですが、この2年ほどで、数回、テレビ局の取材や撮影に応じてきて、一度もオンエアされたことがありません。番組関係者からの保険に関する素朴な疑問に回答する、お客様との面談風景を撮影するなど、それぞれ企画は異なっても、私が話している内容は大差ありません。
 もちろん、私が撮影中に話した内容のみによって放映するか否か判断されているとは思えません。ただ、何が問題なのだろうか? と考えることは無駄にはならない気がします。
 以下、発言内容を振り返ってみます。おおまかに5点にまとめられると思います。
(1)「医療保険」は検討に値しない
(2)難解な商品は避ける
(3)いまどき「保険で貯蓄」は疑問
(4)ネット生保の登場は歓迎
(5)来店型保険ショップや銀行窓口の「中立公正なアドバイス」は無理(?)
といったところです。
 まず「医療保険」は、素朴に「いい買い物」だとは思えません。入院給付金の支払い実績を調べると、例年、契約件数に対する支払件数は5%程度ですし、給付額は1件当たり12万円程度です。
 売れ筋商品では総額200万円くらいの買い物になることを思うと、健康保険の保険料をすでに1万円単位で払っている人が、追加で加入する価値はないだろうとお伝えしています。
 次に、「全般に、保険(商品)はわかりにくいと思いますが……」といった問いかけに対しては「わかりにくい保険は、たいてい『ハズレ』です。たとえば、担当者の説明を聞いているうちに集中力が切れてしまうような商品が、顧客本位で考えられているはずがないでしょう?」と言うことにしています。
 それから、保険で貯蓄しようとすることへの疑問については、次のように理由を説明しています。
 「保険の場合、一般に固定金利で長い契約を結ぶことになります。今どきの保険では低い金利での長期契約です。金利が低い時に長期契約を結んでいいのは、住宅ローンなどお金を借りる場合でしょう。お金を殖やしたい人が積極的に利用する理由は特にないはずです」
 最後に、4と5は、いわゆる販売チャネルに関する質問に答えたものです。2008年から、対面営業に従事する集団を抱えず、インターネットでの保険販売に特化した会社が登場したことを、私は好ましく思っています。
 営業担当者による商品説明を前提としない業態なので、おのずと明快な保険を打ち出す可能性が高くなるからです。
 実際、保険業界で働く人は、料金表を見て選ぶだけのシンプルな「団体保険」を愛用しています。そこで「現状『団体保険』に近いのは、共済やネット生保の商品なので、今後、ますます認知度が上がるといいと思います」とコメントしています。
 一方、こちらも近年、認知度や存在感が高まっている「来店型保険ショップ」や銀行の窓口の担当者については、「手数料を稼がなければならない立場なので『中立公正なアドバイス』を期待するのは現実的でない」と述べることにしています。
 さらに付け加えれば、「XXは検討に値しない」「○○も積極的に利用するメリットは考えにくい」といった発言を拾って、「『XXは不要』『○○なんかいらない』と断言して欲しいといった要望が、番組制作に関わる方から出た場合は、全てお断りしています。
 「医療保険」にしてもコストを削減するなどして、いまよりずっとリーズナブルな価格設定が実現した場合、「貯蓄が増えるまで期間限定での利用はあり」とすることも想像できるからです。
 こうして振り返ると、やはり、番組を提供する人たちの需要と発言内容が合っていない気がします。それでいいと思います。私はこれからも自分に「求められている発言」を想定したりしないで、持論を語っていきます。
後田亨(うしろだ・とおる) 1959年生まれ。1995年に日本生命に転職。2005年より(株)メディカル保険サービス取締役。2007年に上梓した「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)で保険のカラクリを告白、業界に波紋を広げる。以後、主に執筆・セミナー講師・個人向け有料相談を手掛ける。近著に『がん保険を疑え!』(ダイヤモンド社)。このほか「“おすすめ”生命保険には入るな!」(ダイヤモンド社)、「生命保険のウラ側」(朝日新書)。メディア掲載多数。
公式サイトhttp://www.seihosoudan.com/

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