10/09 「チェンジ」への皮肉

 9日の米株式相場は小幅に続伸した。「二番底」への不安がとりあえず和らいだかのようだ。

 この日のニューヨーク市内では、恒例の「ファッション・ウイーク」が開幕。メトロポリタン・オペラ劇場の脇にたった巨大テントから重低音を効かせた音楽が鳴り響き、一大ファッションショーの始まりを告げた。


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 金融危機後はシンプルなデザイン、灰色や茶色が主流だったが、前評判では、今年はよりカラフルな出品内容に変わるという。それが世相や景気を映すなら、米国の「モード・チェンジ」を先取りしているかもしれないが、見立てが正しいとは決して言い切れない。

 朝方に発表された新規失業保険申請件数は市場予想以上に改善。7月の貿易赤字も大きく減ったが、米国の産業構造が一変したとは言い難い。この日の相場を支えたのはJPモルガン・チェースなど金融株。世界的に競争力が強いIT(情報技術)と金融が米国を引っ張る構図は変わりない。

 輸出が好調で貿易赤字の減少に一役買った民間航空機。受注の浮き沈みが激しいビジネス、と見透かされており、ボーイングの株価は上昇どころか1.6%下落。オバマ政権が目指す「輸出倍増」と「製造業の復権」への道のりはまだ遠い。

 「子どもに製造業で働いてほしい親は30%だけ」――。会計監査などを手がけるデロイトがまとめた製造業に関するアンケート調査結果は、製造業再生を掲げるオバマ政権にとって皮肉だ。製造業が「生活水準の維持に大事」との回答は76%と高いが、政府の肩入れの見返りは「それほど大きくない」といった疑念があるのかもしれない。


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 18~24歳の若年層では「生活維持に大事」との回答も55%にとどまる。中間選挙が近づき、民主党の票田である製造業の労働組合に配慮して内向きな政策をとるほど、「今の米国」はしらけていっておかしくない。

 米国だけでなく、世界の注目を集めるファッション・ウイークの主役はもちろん、米国のデザイナー。しかし、その傍らでは、中国やブラジルなど新興国出身のデザイナーが「彩りを添える」と言っては失礼なほど大きな存在感を放っている。

(ニューヨーク=武類雅典)


source: nikkei

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