10/08 [FT]ユーロ危機、ECBだけでは収拾不能(社説)


[FT]ユーロ危機、ECBだけでは収拾不能(社説) 

(1/3ページ)
2011/8/10 7:00
(2011年8月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 ユーロ圏の指導者たちは、ユーロ圏の安定を守るために「必要なことはすべてやる」と誓った。イタリア国債とスペイン国債の購入を決めた欧州中央銀行(ECB)は、このスローガンに見合う行動を取っている唯一の機関だ。その他のユーロ圏の統治機構、なかでも選挙で選ばれた政府の代表は今、存亡の危機を解決するためにECBに匹敵する決意を示さなければならない。
■ECBの国債買いでは足りない
独フランクフルトのECB本部=ロイター
画像の拡大
独フランクフルトのECB本部=ロイター
 ECBが以前、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの国債買い入れに利用した証券市場プログラム(SMP)を再開させたことは正しい。ECBは国債利回りの抑制ではなく、金融政策の効果的な波及を保護するという観点から、SMP再開の判断を正当化している。無理からぬ話だ。借り入れによる資金調達支援と異なり、ECBの権限で金融政策を機能させることに法的に疑わしい点はないからだ。
 このECBの努力は間違いなく公共の利益にかなう。何しろ保有する中核資産の市場価値の急落に見舞われた銀行を通じて信用状況をコントロールするのは困難だ。
 だが主な目的――市場の切なる要望でもある――は、国債に対するボイコットに先手を打つことだ。ボイコットが起きると、スペイン政府とイタリア政府の借り入れコストは手に負えないほど高騰する。ECBの狙いは、ユーロ圏すべての政策当局者の最優先課題であるべきだ。ECBだけに対応を任せておくことは、政治的にも経済的にもリスクが高すぎる。
■効果読めず、政治的な問題も
 経済的なリスクはECBの国債購入がどれほど成果を上げられるかが不確かなことだ。即時的な効果は大きかった。8月8日、イタリア国債とスペイン国債の利回りはそれぞれまる1%ポイント近く低下した。だが利回り低下が持続するかどうかは、ECBが継続する国債市場への介入規模にかかっている。
 SMPはアイルランド国債とポルトガル国債の利回りが10%前後の高水準で推移するのを止められなかった。臆病な介入は、全く介入しないよりも市場心理を大きく損ねる恐れがある。
 ECBの国債購入は政治的にも危険を伴う。効果が出るほど大規模に実施した場合は、特にリスクが高い。まずドイツや同様な考えを持つ社会で、国債購入は政府債務のマネタイズ(貨幣化)に等しいと考える人々をいら立たせる。最悪の場合、ECBがSMPで多額の損失を出せば、政治的に大問題となる資本増強で穴埋めしなければならない。
記者会見に臨んだECBのトリシェ総裁(8月4日、フランクフルト)=ロイター
画像の拡大
記者会見に臨んだECBのトリシェ総裁(8月4日、フランクフルト)=ロイター
■EFSFの権限強化を急げ
 皮肉なのは、このリスクを大きくしているのが、欧州金融安定基金(EFSF)の規模拡大に抵抗するドイツの姿勢だということだ。そのためにECBが仕事を肩代わりすることを余儀なくされたのだ。
 ゆえにECBのジャン・クロード・トリシェ総裁が執拗(しつよう)に財政支援を求めるのは妥当だ。トリシェ総裁はSMPが先に合意済みの国債購入権限をEFSFが各国政府から得るまでの単なる「つなぎ」であることを願っているのかもしれない。
 確かにそれが最善の解決策だろう。しかし反対する国々の拒否により、EFSFが実際に必要とする大きな権限ばかりか、合意済みの権限すら与えられなければ、ECBは望んだ結果を手に入れられない。
 政府は急いでEFSFを強化しなければならない。それと引き換えに、恩恵を受ける国は財政再建を継続しなければならない。これには信頼できる赤字削減策と成長戦略の両方が必要だ。
■対応進むスペイン、遅れるイタリア
 その点で、スペインはイタリアよりも結果を出している。スペイン政府の赤字削減計画はおおむね順調に進んでおり、直近の国債利回り上昇に応じ、一部の租税措置は前倒しされている。また政府は労働市場を抑圧している規制に狙いを定めている。
 一方、イタリアでは、シルビオ・ベルルスコーニ首相の信用失墜が差し迫った問題から関心をそらせてしまった。政府が市場を落ち着かせる対策を打ち出したのは土壇場になってからだ。
 表面的には、労働市場の自由化や赤字削減の前倒しといった一部の対策は適切に見える。だがイタリア政府は1990年代に築いた信頼の多くを失ってしまった。市場はベルルスコーニ首相が実際にそうするのを目にするまで首相が約束した法案が成立するとは信じていない。
■国より欧州全体を見て行動を
 イタリアとスペインはユーロ圏の救済プログラムを受けていないが、次第に政策の条件を指図されるようになっている。これは来るべき将来の秩序だ。ユーロ圏は国の経済政策よりも優先される共同体の管理という代償を払い、連帯を手に入れることになるのだ。
 そうなると、新たな経済統治体制が適切な対象をコントロールすることが、ますます重要になる。財政の規律と同じくらい成長に、公的部門のバランスと同じくらい民間部門のそれに関心を向けねばならない。また制裁は大国の意見に左右されるのではなく、自動的に発動されなければならない。
 旧来の安定・成長協定はこうした要素をすべて欠いていた。失敗したのはそのためだ。
 欧州の債務・成長危機が解決されなければ、欧州統合そのものが危うくなる。だが危機を解決するには、有権者を説得し、必要な対策に支持を得なければならない。これは中央銀行家ではなく、政治家だけにできることだ。
(翻訳協力 JBpress)
(c) The Financial Times Limited 2011. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン配信中
人気記事をまとめてチェック >>設定はこちら
  • 前へ
  •  
  • 1ページ
  •  
  • 2ページ
  •  
  • 3ページ
  •  
  • 次へ

Financial Times 一覧

ロンドン北部ではソニーのグループ会社の倉庫が炎上した(8月9日)=ロイター
ロイター

[FT]英国暴動を助長した携帯メッセージとSNS

 ロンドンから英国各都市に飛び火した暴動は、若者たちが抱く社会からの疎外感と、最新の携帯電話を使ったコミュニケーションに助長され、当局に不意打ちを食らわせた。…続き (8/10)
原子力安全・保安院と原子力安全委員会などを統合した「原子力安全庁」(仮称)について記者会見する細野原発相(5日午後、東京・霞が関)=共同
共同

[FT]ようやく緒に就いた日本の原子力行政改革(社説)

 深刻な支持率低迷に苦しむ日本政府はここ最近、ほぼ何の成果も挙げていない。だが原子力規制の根本的な見直しを打ち出したのは賢明な判断だった。最も重要なのは規制当局を経済産業省から独立させる点だ。…続き(8/10)
独フランクフルトのECB本部=ロイター
ロイター

[FT]ユーロ危機、ECBだけでは収拾不能(社説)

 ユーロ圏の指導者たちは、ユーロ圏の安定を守るために「必要なことはすべてやる」と誓った。イタリア国債とスペイン国債の購入を決めた欧州中央銀行(ECB)は、このスローガンに見合う行動を取っている唯一の機関だ。…続き (8/10)

No comments:

Post a Comment