TPP:米など9カ国の交渉難航 関税撤廃、議論進まず


 日本が参加を検討している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉が難航している。米国など既に交渉に参加している9カ国から日本政府が得た情報によると、焦点の関税撤廃で「本格的な議論を行う状況に至っていない」など交渉対象の21分野の多くが遅れ気味だ。ルール策定が遅れれば、コメなどの扱いで日本の意見を反映させる余地が広がる。日本政府は参加に向けた調整を急ぐ方針だが、国内外に難題を抱え、予断を許さない。【野原大輔】

 TPPは「例外なき関税撤廃」を掲げ、貿易自由化や各種規制の撤廃・共通化など21の交渉分野で高い水準の門戸開放を目指す。交渉は10年3月から始まり、3月まで11回の会合を重ねた。
 ただ、関税分野では2国間の協議にとどまり、全体のルールを議論するに至っていない。米国が砂糖や乳製品で関税の即時撤廃に抵抗しているのに対し、オーストラリアが反発するなど、個別の農産物や工業製品の扱いを巡り、対立する2国間の問題が決着していない模様だ。日本政府によると、「90~95%の品目の関税を即時撤廃し、残りも7年以内に段階的に撤廃」と主張する国が多いが、「即時撤廃は減らすべきだ」との意見もあり、「具体的な内容についての9カ国の合意はまだない」という。
 知的財産の分野でも商標や著作権などのルールをどうするかで意見が割れたまま。米国などは映画などの著作権保護を強化したい考えだが、新興国などは「著作権料の負担が重くなる」などと警戒しているとみられる。
 投資先の国で企業や投資家が不利な扱いを受けた場合、相手国を国際仲裁機関に訴えられる「投資家と国家間の紛争解決手続き」では、乱用を防ぐ仕組みなどの議論が続き、導入そのものへの反対もある。交渉が進展している分野は、対立の少ない貿易手続きの円滑化など限られている。

 ◇日本、国内に根強い反対論

 TPPを主導する米国は「年内の最終合意」を目指しており、「今夏が実質合意に向けた重要な節目」(交渉関係者)との見方が出ていた。一方、日本の参加には9カ国の同意が必要で、日本は9カ国と事前協議を進めているが、日本に農産物市場の開放などを求めている米国やオーストラリアなどはまだ同意しておらず、日本の参加は早くても7月ごろになりそうだ。だが、9カ国の交渉が遅れ、日本の参加が決まった時点でも本格議論に入っていなければ、ルールの大枠が固まる前に日本も議論に加われる。
 もっとも、日本が交渉に加われば、難航している交渉がさらに停滞しかねない。日本はコメなどで関税撤廃の例外扱いを求める考えで、難題が増えるからだ。「ルール作りを急ぐ米国などが日本の交渉参加への同意を遅らせるのでは」(政府関係者)との懸念もある。
 一方、日本国内でも農業団体や与野党のTPP参加反対論が根強い。政府は「日本の意見を反映できる可能性はまだ大きい」と理解を求め、5月の大型連休に想定する野田佳彦首相の訪米までに国内の意見集約を図りたい考えだが、調整は難航しそうだ。
毎日新聞 2012年3月25日 9時43分(最終更新 3月25日 9時50分)


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