(中)正念場の対米・対中外交

 民主党政権発足から1年。日本の対米・対中外交が正念場を迎えている。沖縄県の米軍普天間基地の移設問題は進展の糸口もつかめぬまま。尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件は、中国側の閣僚級以上の暫定的な交流停止に発展した。





記者会見する前原外相(17日、首相官邸)

普天間は長期戦


 「沖縄のみなさんにおわびしながら何とか受け入れていただき……」。外相は17日の就任記者会見で、日米で合意した普天間基地の名護市辺野古への移設について「おわび」という言葉を使った。「最低でも県外(移設)」と繰り返した鳩山由紀夫前首相が沖縄県民の怒りを買ったとはいえ、外相の「おわび」発言は意外感を持って受け止められた。

 国土交通相だった今年5月。「日本は米国との連携でなければ極めて脆弱(ぜいじゃく)な状況に置かれているというのは、国民に政治の責任としてしっかりと知らしめるべきだ」と訴え、対米重視をことさら説いていたからだ。

 外相の外交・安保観には京大在学中に師事した国際政治学者、故高坂正尭教授の影響がある。軽武装、経済重視の戦後日本外交の路線を敷いた吉田茂首相を扱った著書「宰相吉田茂」など高坂氏に脈打つのは現実主義だ。外相の「低姿勢」にも、この現実主義がにじむ。

 12日の名護市議選は普天間基地移設に反対する市長派が過半数を占め、外相の「べき論」と現実の距離は開くばかり。「沖縄の理解を得られないと話にならない。じっくり時間をかけることが必要だ」。外相は19日、都内で記者団に長期戦で臨む考えを表明した。

 11月末の沖縄県知事選以降も普天間問題の推移は不透明。外相は滑走路の位置などを含めた決着時に開催する予定の日米安全保障協議委員会(2プラス2)も「秋という話は一切ない」と明言した。


ガス田も難題


 「低姿勢」が誤解を与えかねない問題もある。日中両国が権益を主張している東シナ海のガス田「白樺」(中国名・春暁)。新たに機材を搬入した中国は「修理のため」と説明するが、日本政府内で額面通り信じる空気はない。外相は18日、菅直人首相らと中国側が単独で掘削に踏み切った場合、対抗措置を取る方針を申し合わせた。

 「中国の台頭を踏まえて本来、日米関係を強めるべきだが、今の政権はできていない。国家利益を追求する中国を制御するメカニズムをつくるべきだ」。神保謙・慶大准教授は指摘する。普天間問題で対米関係が悪化し、衝突事件をきっかけに対中関係は緊張が続く。日米を基軸に戦略を兼ね備えた日本外交を構築できるか。首相は国連総会出席のため22日に米国に向けて出発。23日にオバマ米大統領と会談する。


source: nikkei

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